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□太陽の東、月の西
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何故か、目が覚めた。

静かな夜の気配。

まだ朝が訪れるには遠く。



目の前には、静かに眠るヴァーリ様の横顔。

整い過ぎたそれはほんの少しも動かない、寝息さえ感じさせない。



普段から本を読む時や考え事をしている時、ヴァーリ様はあまりの集中にほんの少しの動きも見せなくなってしまう、まるで良く出来た人形が置かれてでもいるかのように。

硬質な美貌とレプリカントのような気配。

そんな時、私は、そこに居るのが本物のヴァーリ様では無いような不安に駆られる。



今も……。



腕枕をしてくれているヴァーリ様の体温を信じられなくなる。

私の体温が移っただけなんじゃないか、って。

ヴァーリ様は体温さえ普段から低いから。

指をのばしてその頬に触れて確かめてみたくなる……それが生きているヴァーリ様だと。

でも、ヴァーリ様は気配に鋭いから。
もし起こしてしまったら、きっと言い訳が出来なくて困る。



『私が生きていないように見えると言うのなら、君は私を何だと思っている?
私の偽物がどこかに転がってでもいると言うのか?
はん、つまらん。
君にはジョークの才能というものがまったく無いようだ、龍姫』



……ああ、何て言われるか想像出来てしまった。



夜中にこんなバカなことを考えている私。

眠るヴァーリ様は、そんなこと知らない。



綺麗な……綺麗過ぎる、ヴァーリ様の寝顔。

何も考えないほど深く眠っているの?

それとも、夢をみたりもするの?

こうして傍らに寝ていても、眠りに落ちた貴方のなかまでは寄り添えない。

追いかけてもけして見ることの出来ない……太陽の東、月の西のように。

私に出来ることはせめて貴方の眠りがやすらかであるように願うだけ。



朝にはまだ早い、私も眠らなくちゃ。



「……おやすみなさい、ヴァーリ様」



「ああ」



……えっ!?



「ヴァ、ヴァーリ様、起きて……?」



添えられていた腕に強く抱き寄せられて、ヴァーリ様の胸に抱かれた。



「さっさと寝ろ。
言いたいことがあるなら朝になったら聞いてやるが、寝不足の顔を見せたらお預けだからな」



「……はい」



触れた肌から届く、ヴァーリ様の胸の鼓動。

導かれるように私は幸せな眠りに落ちる。



太陽の東、月の西。



眠りのなかまでも私は貴方の傍らに……。










BGM:野田幹子
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