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□SACRED
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もうすぐ日付が変わる。

一日ではなく一年のそれが変わるその時。



案の定オーディンは「オールナイトでフィーバーじゃ!」などと企ててもいたけれど、その土地その世界を護る神々は皆それぞれの地のしきたりに臨み、オーディンのバカ騒ぎに付き合うのは同じ北欧の神だけだった。

その北欧の神でさえ、己の役目、己の司るものを優先して、ほんの一時ヴァラスキャルヴに姿を見せてさっさと帰る者も居る。

オーディンの宴好きは今に始まったことではないし、それに付き合うも帰るも今ではそれぞれの自由だった……特にこんな無礼講のオールナイトな宴には。



あのヴァラスキャルヴの喧騒も遠く離れた此処には届かない。

白い石造りのテラスに降りれば、整然と整えられた庭の先には星の光を映したような岩山が横たわり、その奥からは温かな湯煙が上がる。

静謐な環境を好み温泉を愛好する主が此処に館を建てた、それが理由。

岩山からは貴石とは言えないが宝石を採取することも出来た、けれど「そのままに眺めていたい」といつからか館の主に寄り添うようになった者が言ったために、手付かずに残されている。



「君は、日本の神社に行かなくていいのか」



館の主……ヴァーリ……が、少し不機嫌そうに言った。



「いいえ、行きませんが?」



館の主から少し後ろに控えるように寄り添っていた……龍姫……が答えた。

と、同時に振り返ったヴァーリが彼らしくもない大声を出す。



「何故だ!」



普段は理路整然として突っ込む隙さえ見せないヴァーリがこんなふうに半ば駄々っ子のような物言いをする時は、きちんとした理由があって、でも、それを勝手に推測して結論を出してしまった時だと、龍姫は知っている。

だから……。



「何故、私が日本の神社に行かなければならないのですか?
日本の神様がたのどなたからもご招待を受けてもいませんし」



眼鏡越しのヴァーリの瞳が一瞬、困惑に揺れる。

それを悟られまいとしたのか眼鏡ごと目を押さえたヴァーリ。

けれど、その手が離された時には既にその瞳には冷静で理知的な光が戻っていた。



「君は、日本で生まれ育ったのだろう」



「はい」



「日本の人間は年が開けると自分の信じている神の居る神社に……お詣り? 初詣と言ったか?
とにかく神社に行くのがしきたりだと聞いた。
そこで新しい一年の願い事をして、神から加護をもらうんじゃないのか?」


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