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□願い
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……肌が、触れる。
愛おしい重さとともに。
いつも少し低いヴァーリ様の体温は、触れた瞬間に私の体温を奪ってゆく。
全身の体温がヴァーリ様に奪われ、馴染み、やがてそれはひとつのぬくもりに……なる。
包み込むように柔らかいシーツの海にひとつになったぬくもりが移って、私は幸福に溺れる。
ヴァーリ様の指がなぞるように私の指に触れて。
ぞくり、と。
ほんの少しの……その動きにさえ、私の躯のなかが疼く。
人差指と中指のあいだにヴァーリ様の中指が。
中指と薬指のあいだにヴァーリ様の薬指が。
深く組み合ってゆく。
そうして、ヴァーリ様の大きな手と長い指は。
組み合った私の手の親指はもちろん……小指さえも、ヴァーリ様の折り曲げられて力を込められた長い小指に囚えられる。
触れて、交差して、絡めて。
甘い愛を伝えた指が。
その指先に力が込められ。
私の指を限界まで広げ。
私の手の甲にヴァーリ様の指先が押し付けられて。
私は指先さえ動かせないほどに戒められる。
その指先から。
いつの間にか熱を帯びたヴァーリ様を感じる。
覆い被さるその躯のすべてに熱が巡る。
与えた体温はいつしか逆に与えられる熱となる。
溺れるほどに幸福なぬくもりを感じる時間から。
翻弄され熱の昂りにこの身を任せ乱れ狂うしか出来ない時間へと。
変わる……。
どちらのヴァーリ様も愛しい。
愛しくて、愛おしすぎて、涙が溢れるのを止められない。
ヴァーリ様の薄い唇が私の頬に触れた。
「……それほど愛されていると思えば悪い気もしないが」
愉悦を隠さない瞳を向けながら、その薄く形の良い唇から覗く舌で舐め取られる私の涙。
「たまには微笑ってみせないか?
抱くたびに泣かれると、流石の私でも不安になる」
……ああ、ならば。
ヴァーリ様がそう求めるならば。
愛される喜びをこの身のすべてで捧げよう。
きっと、今。
私は極上の微笑みを浮かべ、涙溢れる瞳にヴァーリ様だけを映し。
ヴァーリ様に……ヴァーリ様のために……。
「それで……いい。
私も君を愛している。
龍姫……」
ああ……。
許されるならば。
永遠をあなたと。
この幸せを。
あなたが求めてくれるのならば。
あなたの瞳が、あなたの唇が、あなたの指が。
あなたが。
求めてくれるのならば。
……愛しています。
あなたを。
ヴァーリ様。
BGM:国分友里恵
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