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□寂しく私が見張るこの夜に
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それをもう一度手に取ってみようと思ったのは、私のつまらない矜持のためだった。



「どうしたんですか? この剣」



それを見た龍姫が不思議そうな顔をする。



「私の剣だ。
いままで地下室に放っておいたんだが」



「……え?」



その疑問符は、私の剣だということにか?

それとも、地下室にか?

地下室だとしたら、私の館に地下室があることを教えてはいなかったし、その区画への出入りも禁じていたので当然だが。



「地下室に放っておかれたというわりには劣化していませんね」



……そこか。



「親父に封印してもらっていたからな」



封印という言葉に何か不穏なものを感じたのか龍姫は黙って私を見ている。



「危険なものでは無い。
ただ、私にしか扱えない剣だが。
私が……産まれて初めて手にして、二度と握らなかった剣だ」



その表情に驚愕が浮かんだ。

だが、そこに嫌悪や怯えが無いことを読み取って、私は心のなかで胸を撫で下ろした。

私が初めて手にした剣、それは……。

私が産まれたその日にヘズを殺すために握った剣。

私がまぎれもない神殺しだという証……だからだ。



鈍く光る黒い大剣。

確実に神を仕留める力を持つと言われ、事実、それは一瞬でヘズの命を奪った。

そして、この剣は、その後、どの神も振るうことはおろか手にすることさえ出来なかった。

オーディンも、鉄の手袋と帯を着けたトールでさえも。

さらに、砕くことも折ることも、魔法さえも受けつけず、手入れをしなくても鈍い光を放ち続けた。



神々の脅威の感情が自分に向けられることを恐れた私は、オーディンに願ってこの剣を封印した。



裁きと断罪の神になった己には二度とこの剣を神の胸に突き立てることは無いと思ったから。



だが……。



「そんな顔をするな。
この剣を使うことは神々の了承を得た。
もちろん、ヘズもだ。
最近は、魔神だけじゃない、怪しい奴らも現れたからな。
私は、神々の世界を護るためにこの剣を握るんだ」



そして、何よりも、龍姫。

君を護るために。

君よりも強い力で、君を護れるように。

龍姫の手を握りしめた。



「君の振り上げる大鎌に負けたくない」



冗談に聞こえるように笑って言った。

実は……それがいちばんの本音だった。



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