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□MIGHTY BOYS-MIGHTY GIRLS
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□□文化祭の合い言葉はフィーバー!?□□
「でぃすこを作るのじゃあ〜っ!」
突然開かれた生徒会室の扉。
それに両手をかけながら理事長が叫んだ。
「用件はドアを閉めてこちらに来てからお願いします。
そもそも理事長とはいえ入室の許可を取って下さい、非常識です」
「お主は相も変わらず頭がコチコチじゃのう」
「俺の頭が固いんじゃないっ!
親父がいいかげん過ぎなんだっ!」
思わず立ち上がって、怒鳴った。
それを見て相手はニヤリとしている。
しまった……私としたことが。
私は冷静さをかき集め、生徒会長としての威厳を纏った。
他の大抵のことには動じない私も、実の親である理事長の前ではいろいろと沸点が下がる。
良くないとは思っているが仕方が無い。
それだけ、この親父のしでかすことは頭が痛いんだ。
さっきも……何と言った?
「でぃすことは何です?」
「ダンシング・オールナイトでフィーバーするところじゃ!」
「却下です」
「……」
「却下です。わかったらさっさと出ていけ、馬鹿親父」
我ながら声に込めた冷気で室温が下がった気がする。
だが、当然だ。
ここは学園だ。
理事長とはいえ親父の遊び場ではないし、一晩中踊るところでもフィーバーするところでもない。
「わかったら出ていって下さい」
「イヤじゃ、トニーがかわいそうなんじゃ〜!」
親父……理事長は、私の机に突っ伏して泣き出した。
でぃすこ?
トニー?
脈絡が無さすぎてわからんっ!
そんな理事長の姿に持ってきた茶を差し出すのを躊躇ったのか、茶をのせたトレイを置いた副会長の龍姫の手が震えた。
手? いや、全身が挙動不審になっていないか?
何かを察した様子で離れようとする龍姫の手を掴んだ。
「説明したまえ」
がっくりとうなだれる龍姫。
どうやら彼女がこの件に関わっているらしい。
「あの……。
理事長にフィーバーに関する物語をお教えしたんですが」
「理事長の好きそうな話か?」
「いえ、貧困と挫折しかない青年が不安ながらも這い上がろうとする話です」
そんな話のどこがフィーバーなんだ?
だが、トニーがかわいそう、というのはその話の青年のことなんだろう。
「では、でぃすこは?」
「トニーは踊ることが唯一の希望だったんじゃ!
トニーがオールナイトで踊ったのが、でぃすこという場所なんじゃ〜!」
実は涙もろい理事長の顔は既に涙でぐちゃぐちゃになっている。
発言する機会を奪われた龍姫の表情には、そんなつもりは無かったという色が浮かんでいた。
つまり、年中フィーバーと叫んではお祭り騒ぎで傍迷惑な理事長に、しんみりとしたフィーバーを語ったら、別のスイッチをいれてしまったということか。
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