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□罰
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「少し疲れたな」
分厚い本を閉じ、ヴァーリ様の長い指が眼鏡を外す。
はらりと落ちたプラチナの髪を受けた瞳は閉じたまま。
その手は当たり前のように眼鏡を私に渡す……はずだったのに、なぜか眼鏡が宙に浮いた。
「え?
……ヴィ、ヴィーザル様!?」
「兄貴の眼鏡ゲット〜♪」
「ちょっ!!」
言いかけて私は、ヴァーリ様の前であることを思い出し、瞬時に脳内緊急指令を下す。
指令の内容はもちろんヴィーザル様撃退!
「ヴィーザル様、ヴァーリ様はお疲れなんです。
外に出て下さい」
ヴァーリ様にはにっこりと微笑んでしばしの暇の許可をいただいたあと、ヴィーザル様を室外に引きずり出した。
脳内指令ミッションコンプリィィィィト!
「何しに来たんですか!
っつか、いつの間に来てたんですか!!」
「えー?
油断大敵、壁に耳有りクロードチアリ、って言うんでしょ?
キミの世界では」
「それ、用法も用語も間違ってますから!
どこで覚えてくんですか、そんなしょーもないギャグ」
「……キミって、兄貴の前とホント性格違うよね」
「ヴィーザル様がそうなるようなことしでかすからじゃないですかっ!!」
「イイじゃない。
一緒にバカ騒ぎして、兄貴の注目度ナンバーワンを目指そうぜ」
「そんなナンバーワンまっぴらごめんなんですってば!
第一その理屈でいったら注目度ナンバーワンは、永遠にオーディン様ですからっ!!」
「うーん、そっかぁ……。
じゃ、違うアプローチ考えよっかな」
「……ちょっと。
この間の温泉みたいなのはやめて下さいよ?
“兄貴の喜ぶ顔が見たいんだ”なんて言葉にほだされて協力したら、お出迎えバカ騒ぎなんかやらかしてくれちゃって!
あれ、後で誤魔化すのどんだけ大変だったと思います?」
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