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□Moulin Rouge
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いつもより少し遅い時間に龍姫が訪れた。

声に微小かな焦りと震えが含まれている。

焦りはわかる、時間に遅れたからだろう。

だが……震え?



「入りたまえ」



静かに入ってきた龍姫を見て息が止まった。

な……な……な……。



「なんだっ! その破廉恥な格好は〜っ!」



龍姫は……。

派手な花の首飾りで胸元の中心こそ隠れているものの。

盛り上がった白い胸の上部は完全に露わだ。

申し訳程度に隠されたヒラヒラした透けた布の下には、胸の下部が……身を動かせばどうかするとはっきり露わになる。

脚の付け根の上ギリギリで結ばれた帯はこれもヒラヒラした布がついていたが、左脚の太股はほとんど露わだ。

何故か後ろだけ引きずるほど長いが、それに何の意味がある? 隠すところはそこではないだろう。



「ヴァーリ様、ナビィも止めたんです〜。
龍姫様が、遅くなったからこのままヴァーリ様のところに伺う、って。
でも、いくら何でも、南の島の衣装で雪の降り始めた北欧の地を歩くのは寒いですって〜」



ナビィも来ていたのか。

……雪?

外は雪になっていたのか?

それでこの格好では寒かっただろう。

少しくらいの遅れでそんなに急ぐことは無いのだ。

もっと暖かい格好で……。



……いや、違う!

だから、問題はそこではないだろう。



ナビィもだ!

寒さ以前に何故この格好で出歩くこと自体を止めないっ!



「ナビィ。
龍姫は身体が冷えているようだから今夜は私の館に泊める。
君は明日の朝、龍姫の服を持ってここに来たまえ」



とりあえず、調子を狂わせるナビィは厄介払いした。



さあ、じっくり、その格好の訳を聞かせてもらおうか。

龍姫。















……つまり。

以前に君が衣装を褒めたペレという女神から褒美として特別に衣装を賜った。

そこを南の島の女神達に捕まってその場で衣装に着替えさせられて飾り立てられた。

それですっかり遅くなった君は慌ててその格好のままで戻り、さらにその格好のままで私のもとに来た、と。

ふぅ……。

几帳面な君が私のもとを訪れる時刻に遅れるのを何より気にするのは、好ましいことだと常々思っている。

だが、今回だけは別だ。



「龍姫……君はバカかっ!」



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