short
□ホワイトデー
1ページ/2ページ
1ヶ月前の今日。
ヴァーリ様は倒れた。
原因は……私がヴァルキリー様直伝の特製スイーツを差し上げたせい。
「同じ材料で一緒に作ったのにどうして見た目が違うんだ!」
「まったく同じ物より、ひとつしかない特別感があっていいですよ〜(ひとつなら味見もさせられませんし〜)」
「なるほど! ナビィは良いことを言うな。
では、早速ジークフリートに食べさせてこよう。
龍姫もそれをヴァーリに食べさせるんだぞ!」
「ああ、ヴァルキリー様、行ってしまわれましたね〜(助かりました〜)」
「ナビィ……心の声が洩れてるけど」
「ひぃぃ〜!
……あ、でもヴァルキリー様には聞こえてなかったようなのでセーフです〜。
それより、龍姫様はヴァーリ様のところに行かなくていいんですか?」
「うーん。
なぜか見た目マトモに出来ちゃったけど、材料はヴァルキリー様と同じなのよねぇ(ヤバい気がするんだけどなぁ)。
ねぇ? ナビィ、これ食べたくない?」
「……龍姫様も心の声洩れてますから。
女は度胸ですよ!
ヴァルキリー様を見習って、とっとと行って下さい!」
「え! ちょ、ちょっと、ナビィ!
追い出すなんて、ひどいっ……」
結局、目の前でナビィに扉を閉められて、途方に暮れた挙げ句行ったのよねぇ。
ヴァーリ様のところに。
ヴァーリ様は普通にお食べになってたんだけど、途中で倒れてしまって。
慌ててダスラ様に診ていただいたんだけど……。
「……で?
何を食べさせたって?」
「ヴァルキリー様直伝の特製スイーツ……です」
「おかしな物ではないぞ!
中国の薬の神に、ある動物の角が惚れ薬になると聞いたんだ。
ヴァーリと龍姫は見ていてじれったくなるからな!
それくらいのスパイスがあったほうがいいだろう!」
「え? 待って、ヴァルキリー様、そんなの聞いてないですよ!
あのスパイスって、そんな……」
「ああ……うん……。
確かにそういう薬もあるわ(ただ、それ、惚れ薬じゃなくて精力剤だけど)。
でも、なんでそれでぶっ倒れたんだろうな、ヴァーリは。
あんた、ヴァルキリー?
ちなみにその薬、中国の誰に教えられた?」
「神農だ!
もっとも教えてもらった動物はいなかったから、ゴブリンの角で代用したが」
「あんた……二度とそれはやるな」
神農様といえば専門は植物の薬じゃなかったかしら……と言おうとしたけれど。
それよりも、絶望感漂うダスラ様の表情……見てられなかった。
.