short
□hide my tears
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夜の雪の森は冷たかった。
私の心のように。
どんなに近くに居ても私の想いはヴァーリ様には届かない。
悲しくて。
冷たくて。
抱きしめられない心の代わりに身体を抱きしめた。
「どうした? 龍姫」
ヴァーリ様が脚を止める。
どんなに小さなことも、ヴァーリ様は見逃さない。
私のことなんか何とも思っていないくせに、何故ヴァーリ様は私のどんな小さな変化も見逃してくれないんだろう。
「これを着たまえ」
ふぁさり、と。
肩にコートをかけられる。
それまでヴァーリ様が着ていたコート。
まだヴァーリ様のぬくもりが残るコート。
そのぬくもりに包まれて泣いた。
欲しいのは……あなたの腕のぬくもり。
欲しいのは……あなたの心。
「何故、泣くんだ」
「泣いてなんかいません」
「泣いているだろう」
「泣いて、なんか……」
あなたに失望されたくない。
あなたに見捨てられたくない。
だから……。
泣いてなんかいません。
泣いてなんか……いないんです、ヴァーリ様。
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