short

□幻のラグナロク
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スルトも正気に戻って守護の任に着いたことだし、お祝いのパーティーでフィーバーじゃあ!



……なんてオーディンが言い出したのは先日のこと。

まー、今回ばかりはボクも本気でギャラルホルン吹かなきゃなんないかも? なんて思っちゃったから、あのオヤジさんの気持ちもわかるんだよね。

でも、オーディン直々のこの特別任務はちょっとねー。



「今日1日よろしくね、龍姫」



「ヘイムダル様、こちらこそよろしくお願いします」



そういう龍姫の表情は浮かない。

そりゃそうだよね、こんな日こそヴァーリと楽しみたかったよね。



「ヴァーリはさ、オーディンからパーティーの責任者押し付けられちゃったから。
ボクじゃ不服だろうけど精一杯エスコートするからガマンしてね」



「とんでもないです!」とけなげに微笑む龍姫の表情を見たら、ボクの胸がチクっと痛んだ。



「じゃあ、とりあえず見てまわろうか」



各地の神々も遊びに来てて、それぞれの地域の飲み物や美味しいものもふんだんに用意されてる。

龍姫の好きなお菓子や果物を取ってきてあげると、龍姫はやっと嬉しそうに笑ってくれた。

ああ、良かったー。



……って、さー!

ボクが良かったって思った矢先にそれって反則じゃない?

ボクの千里眼に映った、近付いてくる真っ青なオーラ。

怒ってる、あれはメチャクチャ怒ってる!



「あ、龍姫。
あっちに大黒天がいるんじゃない?
挨拶してくれば?
ボクはここで待ってるから」



「あ、本当!
じゃあ、ヘイムダル様、少しだけ失礼しますね」



ふうっ……。

とりあえずセーフ。

と言っても近付いてきた怒りのオーラはどうにもならないワケで。

とうとう怒りのオーラの本体はボクの前にやってきた。



「ヘイムダル! ……助けろ」



「……」



「助けろと言っているだろう!」



「あー、……ヴァーリ、だよねー?」



「当たり前だ!
私以外の誰がいる!」



……って、あのさー、ヴァーリ。

今の自分のカッコ考えなよ。

化粧バッチリのうえにピッチピチのチャイナドレスなんか着ちゃってさー。

そのカッコで、「私だ!」とか言わないでよ。

せっかく堪えまくってるボクの笑いのダム、決壊させないでくれないかなー、頼むから。

何しろ、そんなキミを龍姫から遠ざけておくのが、オーディン直々の指令なんだ。

これは失敗出来ない……あ、ダメだ、笑いそう。



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