short

□confession
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「ヴァーリは……少し、怖いわ」



その言葉を聞いた時に。

“シンモラ様”だとか。

“神様”だとか。

そんな考えを捨てさった。



シンモラ。

やわらかい微笑みを浮かべて誰にでも優しく誰にでも好かれるであろう女神。



でも、今この瞬間からこの女は、私にとって殺したいほどの憎悪を向ける対象でしか無い。



「いい人だというのはわかっているのだけれど、とても厳しいから」



何がわかる?

何をわかっている?

貴女なんかに、ヴァーリ様の何が。



「ヴァーリの前で変なことを言ったら怒られるかも……と思うと緊張してしまうの。
いつか楽しくお話できたらいいのだけど……」



ヴァーリ様を……。

ヴァーリ様と居られることがどれだけ途方も無い幸運なのかを……。



全然わかっていない、こんな女!



悔しい! 悔しい! 悔しい! 悔しい! 悔しい! 悔しい! 悔しい! 悔しい! 悔しい!



息が出来ない。

頭が痛い。

涙が、こらえきれない。



「あら、どうしたの? 龍姫。
……あ!
私、悪いことを言ってしまったのね。
そんなつもりではなかったのよ?
ごめんなさいね」



答えることも、表情を動かすことさえも出来なかった。

頬が焼けつくかと思う涙も流れ落ちるに任せて。



私は“敵”に背を向けた。















泣きながら草原を歩いても誰にも遭わなかった。

流しっ放しにしていた涙は、だから、頬から顎を伝って首や胸元まで濡らしていたのだけれど。

でも、ここからは涙は流せない。

指で拭った目尻が擦れて少し痛かった。



「ヴァーリ様、龍姫です」



「入りたまえ」



いつものやりとり。

いつものヴァーリ様の書斎。


でも、やっぱり、ヴァーリ様は私のこれを見逃してはくれなかった。



「その目はどうした?」



「何でも……ありません」



これ以上見られたくなくて俯いたけれど、今さら無意味なこと。

きっと、ヴァーリ様に追求される。

そう思った時。



ばん、と。



何かが打ちつけられる音がした。



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