short

□BELIEVE
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「では、また明日の朝伺いますね」



私が読み広げた書物を片付けた龍姫がいつもと同じ挨拶をする。

空いた時間を私のために使い、夜になればナビィに用意された自室に戻る。

翌朝にはナビィとその日の打ち合わせをしたあとに私の館に来る。

ナビィから依頼があれば私とともに出掛け、何もなければ私と共に過ごす。

龍姫の生活はいつも変わらない、真面目な龍姫の性格を表したように。



「待ちたまえ」



「はい? 何かご用ですか」



つい、呼び止めてしまった。



「いや、用は無い」



そう、用は無い。

だが。

ああ、用は無いと言ってしまったら言い出し難いではないか。

まして。

用が無くても一緒に居たいなどと……この私がどんな顔で言えるというんだ。



いつもいつも言えずに帰していた。

君が帰ってゆく夜空。

星の瞬きは意気地の無い私を笑っているようで。

月の輝きは光の剣になって私の胸を刺した。



何事も無いように夜になれば別れる私と君。

だが、それは偽りの表情で。

本当は離れたくないのだ、と。

君もそうなのだ、と。



期待する私は愚かだろうか。



「龍姫」



「はい」



「夜明けを一緒に迎えないか」



私を見つめる君の瞳。



「返事は……。
はい、でいいんでしょうか?」



その瞳に、もう私以外のものを映したくない。



「返事は要らない」



抱き上げた君をベッドに運ぶ。



星の瞬きも月の輝きももう届かない。

夜明けの光が差しても。



その瞳が映すのはもう私だけだ。






Fin.

















【ネタ】
診断メーカー『神様の彼女になってみたー』の結果から、『ヴァーリに「夜明けを一緒に迎えないか」とベッドに引っ張りこまれました』をネタにしました。

タイトルとイメージはPERSONZの曲『BELIEVE』から。

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