short

□BELIEVE II
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「では、また明日の朝伺いますね」



ヴァーリ様が読み広げた書物を片付けていつもと同じ挨拶をする。

空いた時間をヴァーリ様のために使い、夜になればナビィに用意された自室に戻る。

翌朝にはナビィとその日の打ち合わせをしたあとにヴァーリ様の館に伺う。

ナビィから依頼があればヴァーリ様とともに出掛け、何もなければヴァーリ様と共に過ごす。

私の生活はいつも変わらない。



「待ちたまえ」



「はい? 何かご用ですか」



何故か、呼び止められた。

あらぬことと解っていても沸き起こる期待は止められない。



「いや、用は無い。
疲れているだろう、早く帰って休みたまえ」



そう……ご用は無いのですね。

だから私は帰らなくてはならない、私の部屋へ。

まして。

用が無くても一緒に居たいなんて……私には言えないこと。



いつもいつも言えずに帰っていた。

帰り道、見上げる夜空。

星の瞬きは意気地の無い私を笑っているようで。

月の輝きは光の剣になって私の胸を刺した。

つらくて、悲しくて。

心は悲鳴のようにヴァーリ様を呼んでいた。



何事も無いように夜になれば別れる私とヴァーリ様。

でも、それは偽りの表情で。

本当は離れたくない、と。

ヴァーリ様もそう思って下さる、と。



期待する私は愚かだろうか。

そうして扉に向かう足取りが重くなってしまうのは。

呼び止める声を待ってしまうのは。



「龍姫」



「……はい?」



「夜明けを一緒に迎えないか」



私を見つめるヴァーリ様の瞳。

嘘じゃない? これは現実?



「返事は……。
はい、でいいんでしょうか?」



この瞳に、もうヴァーリ様以外のものを映したくない。



「返事は要らない」



抱き上げられてベッドに運ばれる。



星の瞬きも月の輝きももう届かない。
夜明けの光が差しても。



この瞳が映すのはもうヴァーリ様だけです。






Fin.

















【あとがき】
『BELIEVE』夢主ヴァージョンです。
最初ヴァーリ様ヴァージョンしか書く予定ありませんでした。
が、ヴァーリ様ヴァージョンを書いたあと、『BELIEVE』を聴いていてジル姉さんの「I BELIEVE…I BELIEVE…」という歌声にむしろヴァーリ様に恋い焦がれる夢主の姿が浮かんで……。
こちらのヴァージョンが出来てしまいました。

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