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□Always On Your Side II
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気付いていないわけでは無かった。



時折息を止めて私を見つめる瞳に。

横を向いて唇を噛むことに。

爪が食い込むほどに握られた手に。



気付いていて言えなかった。



誰が、言える?



そんなに私を好きか、などと。



……私は、そこまで傲慢な男ではない。



だから、私は私の想いさえ押し隠した。

龍姫には数多の神々を救う役割があるのだから、と。

私がすべきことはそんな龍姫を守護することなのだ、と。



だから。



龍姫をひとりの女に引きずり下ろして私への愛に溺れさせるのは……罪なのだ、と。



だが……。



お節介な神々が次々と私の元を訪れた。



最初は、話を聞かない戦乙女だった。

感情を押し殺して、泣くことさえ出来ない。

そんな龍姫が可哀想だと。



何度も通い詰めたのは千里眼の持ち主だった。

ひとりで居る時の龍姫の声にならない叫び。

その悲痛な叫びが心に刺さるのだと。



いちばん私を打ちのめしたのは、普段は騒がしく掴みどころの無い弟からの知らせだった。

龍姫が冷たい湖でまるで錯乱したように幻の私に追い縋って命を落としかけたのだ、と。



……馬鹿な!



そんな無理をさせてまで与えられた役割を果たさせねばならないというのか。

あれは、ただの女だ。

龍姫がどれほど大事な役割を背負っていようと。

あんな、ただの脆い女に。



いや。

違う。



悪いのは私だ。



大義や分別という言葉を盾にして、自分の想いも龍姫の想いも閉じ込めてきた。

龍姫を弱くしてしまうのは私だと解っていたから。

言えなかったのでは無い。

言わなかった。

言えば、龍姫を、私を愛するただの脆い女にしてしまうから。



言ってしまえば、こんなに簡単なことだったのに。



「龍姫。君を愛している」



子供のように膝を抱える龍姫を見て、初めて気付いた。

想いを閉じ込めることの愚かさと、想いを伝えることの簡単さに。



「だから、私の傍に居ろ。
いつでも……いつまでも」



私の覚悟とともに私の愛を受け取れ。

この先にどんなことが待っていようと私は君を護ろう。



だから……。










BGM:SHOW-YA
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