short

□Grazioso
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『私は君のことが気に入ったのでね、これからも君は私の傍に居るように』

『以前にも言っただろう。私の所には頻繁に訪れるように、と。それを怠っているのは感心しないな』



……ああ、夢を見ていたのか。

あれはまだ龍姫と出逢ってそれほど経っていない頃の私だった。

自分で言うのもなんだが、ずいぶんと余裕のある態度でいたものだ。



あの頃の私が今の私を見たなら……。



何と言うだろうか。

驚くか。

慌てるか。

あきれるか。

いや。

有り得ないことだと信じないかもしれない。

きっとそうだ。

自分の眼で見たことさえ信じられずに頑なに否定するだろう。

あの頃の私は、それくらい堅物だったし、自分を解ってもいなかった。

あんな台詞を……言ってさえおきながら。



私の腕のなかの龍姫を見るたびに思う。



もう、君無しでは居られない。

君無しでは息をするのさえ苦しい。



「龍姫」



「ん……ヴァーリさ、ま」



目覚めた君はうっとりと微笑む。

まるでまだ夢のなかに居るように。

美しい夢に魅了されているかのように私を見つめる。



その白い首にゆっくりと、優雅に……近付き……喰らいついた。



目を覚ませ。

私は現実だ。

君は私のものだ。



痛みに仰け反る首を舐めれば甘い声が何度も私の名を呼ぶ。



君無しでは息をするのさえ苦しい。

もう、君無しでは居られない。

私は……。













BGM:KAMIJO
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