セブンス ヘブン

□セブンス ヘブン 3
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青い空のもと、ぼくは家路を急いでいた。島の日暮れは東京に比べてかなり遅く、もう4時だというのにまだかなり明るい。島でできた唯一の友だちの涼介とはさっき分かれ道で別れた。

(ど、どうしよ〜!!りょうすけに花火大会に連れてってもらえる〜!!)

ぼくはウキウキしていた。そう、涼介に花火大会に連れて行ってもらう約束を取り付けたからだ。

(二人で花火大会なんてデートみたい〜!!)

そう、ぼくは島でできた唯一の友だちである涼介に恋をしてしまったのだ。

転校初日、都会から来たぼくを珍しがってクラスのほぼ全員がぼくの席を取り囲んだ。なんで島にきたの?とか、親の仕事はなに?とか。もともと人見知りするタイプのぼくはクラスメイトからの質問攻めに困惑した。おどおどしているぼくを不憫に思ったのか、それとも自分に押し付けられた“転校生に校舎案内をする”という仕事を早く終わらせてしまいたいからなのかはわからないが、僕の前の席に座っていた男子が僕の手を取り立ち上がった。いきなりのことにクラスメイトは驚いてさっとぼくらの周りから一歩退いた。

「校舎案内」
「え?」
「校舎案内するからついてこいよ」

そう言って彼は振り向き僕の手を取り、ずんずんと歩き出した。ぼくはハッとした。ぼくの方を見た彼の顔がとてつもなく綺麗だったから。それからぼくは校舎案内どころじゃなかった。その綺麗な横顔に見惚れっぱなしだった。そして、校舎案内も中盤に差し掛かったあたりで彼の名前をまだ聞いてないことに気付いた。

「ねぇ、」
「なに?」
「ぼく、きみの名前知らない。名前なんていうの?」
「涼介、山田涼介」

彼は名前まで綺麗だと思った。 ぼくは彼と何としてでも友だちになりたいと思った。綺麗な顔はもちろんのこと、クラスメイトに囲まれたぼくを助けてくれた優しさにも惹かれてたのだ。

ぼくはそれから毎日彼に話しかけた。教室にいないときは大体屋上にいるということも覚えた。そして、彼はその綺麗な顔に反して頭があまりよくないとか、実はものすごく動物が好きだとか色んな彼を知るたびにぼくは彼に惹かれていった。まさか同じ男の子をこんなに好きになってしまうなんて思ってなかった。だけど走り出した想いは止まりそうもなくて。

(断られなくて良かった。ほんとうにりょうすけは優しい)

花火大会に誘ってしまうほどにぼくを大胆にさせる。

急いだからか、家にはすぐにたどり着いた。

「ただいま」
「お、知念おかえり〜」

帰宅してぼくを迎えたのはぼくの幼馴染兼世話係の大貴だった。ぼくが小さい頃からぼくのお世話係として隣にいる。最初はぼくのことを侑李様なんて呼んで敬語で話していたが、堅苦しいのは得意じゃないから呼び方も言葉遣いも友だちと接するようにさせた。

「だいき、今週末の花火大会友だちと行くことになったの」
「花火大会?」
「そう、ぼく花火大会行ったことないでしょ。だからね、友だちにつれてってって行ったらつれてってくれることになったの!」
「ふーん」

聞いてるのか聞いてないのかわからないような大貴の反応にぼくはむっとする。

「ねぇ、聞いてる?」
「聞いてるよ。花火大会ねー。そんな人混みに夜行ったら体調悪化するんじゃない?」
「別に平気だよ。島に来てからよっぽど良いし。」

大貴はぼくの体調を案じてあまり乗り気じゃないみたいだ。でもぼくは必死で説得する。

「行ってもいいでしょ。一緒に行く子すごく優しくて頼りになるし。」
「いざとなったら置いてくかもよ?」
「りょうすけはそんなことしないもん!」
「ふーん。りょうすけって言うんだ。知念はかわいいから、変な気起こすかもしれないよ?」

いつもはぼくに甘い大貴のあまりの反応にぼくは困惑する。

「なんでそんなこと言うの?何も知らないくせに!」

ぼくはもう大貴の顔も見たくなくて手元にあった弁当バックを彼に投げつけてリビングを出た。

「ちょ、いってぇ!ごめん、言い過ぎたから、」
「もういい!大貴なんてだいっきらい!」

ぼくを追いかけようとする彼を振り切るようにぼくは自室に入り鍵をかけた。謝る大貴の声が聞こえたけどそんなものもうどうだっていい。
病気さえなかったら。自由に大好きな人と花火大会くらい行けたのに。体育座りをして膝の間に顔を埋めて、自分の病気を恨むことしかぼくにはできなかった。





※有岡くん登場でございます笑
有岡くんは知念ちゃんのことが大好きです。
ちなみに知念ちゃんは有名な財閥の社長の愛人の子という設定です。
愛人の子であるため跡を継ぐことはできない上にあまり愛されず育った的な感じで書いてます。
両親は忙しさを理由に知念ちゃんの世話を有岡くんに丸投げしちゃってそんな可哀想な知念ちゃんを有岡くんは愛おしくてたまらない的な感じです。
兄心であり恋心でもある的な。

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