セブンス ヘブン

□セブンス ヘブン 4
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ガヤガヤとした独特の雰囲気。心臓すら震わすような太鼓の音。カランカランと鳴る下駄の音。
振り返ると浴衣姿の天使。
ああ、花火なんかよりお前の浴衣姿のほうがよっぽど楽しみだったなんて―――



俺は約束通り知念と花火大会に来ていた。知念はかなり楽しみだったらしく、上等そうな白い浴衣を着ていた。普通の男だったらとうてい似合わないような繊細な柄の入った浴衣が驚くほどに似合っていて、俺は一瞬見惚れてしまっていた。

「りょうすけ!金魚すくいしてみたい!」
「!?
た、確かあそこらへんに屋台あった気がするけど」

はしゃいでいつもより言動が子どもみたいで、蒸し暑さからか頬がほんのりと赤いような気がして。やっぱりデートみたいだなんて思いながら知念が回りたいという屋台に付き合った。

「ちねん、あと10分で花火はじまるよ」
「花火!はやく見たい!」
「人少なくて見えやすい海岸、近くにあるから行こうか」

声をかけると知念は嬉しそうに頷いた。はぐれないようになんて昔からの常套句を使って手を握る。はやく二人きりになりたいからほんの少し早足になる。
海岸につくと、例年通りそこは人気がなかった。

「少し歩いたけど体調平気?」
「もお〜平気だよ〜。この日のこと、すっごくたのしみにしてたんだから!ここで体調崩すわけにはいかないよ。」
「ふふっはしゃぎ方、子どもみたいだな。」
「子どもじゃないもん〜!でもそうやってなんだかんだ言って連れてってくれて、ほんとうにりょうすけは優しいね。ありがとう。」

いきなり少し大人びたような表情で言う知念に俺は少し驚く。

「俺も少し行きたかったから。別いいよ。」

なんて、何でもないようにいいながら内心はすごくドキドキしている。可愛いとか愛おしいとか大好きだとか、彼への思いが胸を占める。そこからどう話せばいいのかわからなくなって、黙り込んで空を見上げていた。
すると、お馴染みの音と共に花火が始まった。毎年家のベランダから見えているのと同じなんの変哲もない花火のはずなのに、いつもよりきれいに見える。

「すごい」

ぽつりとつぶやいた彼の方を見ると、すごく幸せそうな顔をしていた。

「そうだな」

短く返してまた空を見上げた。本当はずっと花火を見上げる横顔を見ていたかったけど、想いに気付かれるのが嫌だったから。
そして突然肩に軽い衝撃が走った。見ると知念が俺の肩にもたれかかっていた。

「ちねん?どうかした?」

いきなりの接触にドキドキして、顔を見るとかなり具合が悪そうで。

「おい!ちねん!気分悪いのか?!」

肩をつかんで必死で尋ねる。どこか焦点の合わない瞳でへいきなんて言われたけど、とうてい平気そうには見えなかった。
ここから知念の家まで歩いて約7分。
俺は知念をおぶって急いで家路を急いだ。

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