セブンス ヘブン

□セブンス ヘブン 5
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知念の家の場所は彼との会話からなんとか推測できた。この島では見かけないような小さい綺麗な洋風の家だった。
おぶった知念は驚くほどに軽くて。ほんのちょっと人混みに出ただけで体調が悪くなるのを見て、彼の病気の深刻さを思い知らされた。俺は軽く見ていたのだ、彼の病気を。ちょっとくらい平気だろうなんて。俺の甘さのせいで、彼はいま俺の背中で苦しんでいる。
インターフォンを鳴らし、家の人が出てくるのを待つ。すると、ドタドタと騒がしい足音が聞こえてきて、ドアが勢いよく開いた。

「知念おかえり!」

てっきり親御さんが出てくるのかと思ったら、俺とそんなに歳の変わらないような青年が出てきて俺は驚いた。
そして俺の背中におぶられた知念を見て青年の顔がさっと青褪めるのがわかった。

「えっと、知念くん花火の途中で具合が悪くなったみたいで、」
「帰れ。」
「えっ」
「知念をおろして帰れって言ってんの。」

青年が俺のことを睨む。

「知念のこと、こんな具合が悪くなるまで放っておくなんて。“りょうすけは優しいから”なんて言ってたけど、こんなやつと行かせるんじゃなかった。」

俺はその言葉に悔しくなって、でも言ってることは正しくて、ぐっと口をつぐんだ。そして、おぶっていた知念を玄関の上がり口におろして、俺はドアに手をかけた。

「あの、今夜はすみませんでした。」

頭を下げながら、声が震えそうになるのをぐっと堪えて声を絞りだす。

「もういいよ、今夜のことは。でも今後一切知念に近付かないで。こいつのことなんも知らないくせに。」

俺はもう一度頭を下げて知念の家を後にした。


全部俺のせいだとはわかっていた。わかっているからこそ辛かった。青年のまったく言うとおりで悔しくてたまらない。
そして同時に彼の病気のことが恨めしかった。なぜ知念のような優しくていい子のことを蝕むのだろうか。この世の中には何億人という人がいて、なぜ彼じゃないといけなかったのだろうか。きっと今も彼はベットの上で苦しんでいる。
胸が苦しくて苦しくて嗚咽となって溢れ出る。
でも俺はわかっていた。病気がなかったら知念は島に来ず、俺は知念と出会えなかった。俺はもう知念と出会う前の世界なんて思い出せそうもなかった。それほどに、彼が自分の中で大きな存在となり、愛おしくなっていた。


花火の音の正解は結局聞けなかった。だってそんなのどうでも良かったから。天使と花火大会に行けるのなら、正解が知りたいなんてただの口実に過ぎなかったから。
俺は花火が終わったあとのいつもより暗いような気のする空の下、泣きながら家に帰った。

※有岡くんと山田ちゃんの直接対決です。有岡くんはただただ知念ちゃんのことが好きで心配なだけなんです。

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