ハイキュー

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サーブ練習をしている角名は、隣の治に声をかけた。




角名「......ボーっとしてるね。」





角名の指差す先には、サーブの成功率をまとめている名無し。


目線はノートに...は向かわず、少し先のコートへ。
手元は完全に止まっていて、微動だにしない。







治「..........しとるな。

............この時期は、毎度や。」







この時期、とは。


バレーの合宿やら取材やらで、侑がいない時期のこと。

今回は全日本の強化合宿だが
“高校No.1セッター”の名を持つ侑が何日かいないことは、珍しいことではなかった。




侑がいないこの時期は、名無しの集中力が最も欠けやすい時期で
今も、ペンを握ったままピクリともしない。


さすがに、何か言った方がいいのか

と、治が動き出す前に







北「......名無し、手ぇ止まっとる。」







主将の北信介が、名無しの隣に立ち、肩を軽く叩いた。




「......っは!!...........堪忍なー。」





北の声で我に返った名無しは、何度かペンをくるくる回して
コートと隣の北とを交互に見て、笑顔で誤魔化そうとする。


それをお見通しな北は、じっと名無しを見つめた。





「......そないに睨まんでも...。
......大丈夫、自覚しとる。......ノブ先輩気にし過ぎやねん。」






部員全員を独特なあだ名、もしくは下の名前で呼ぶ名無しは
礼儀正しいと言えば間違いはないが、敬語は使わない。

...が、さすがに監督やコーチには敬語を使う。


北のことを『ノブ先輩』と呼ぶのは、名無しが初めて部員の名前を名簿で見た時
“信介”を“のぶすけ”と読んでしまったのが理由。

すぐに本人によって“しんすけ”と訂正されたが
その後も、何度も間違えてしまい、あだ名にまで進歩していた。




“気にし過ぎ”と言われた北は、眉をひそめる。






北「......練習に支障を来すから言うてん。

まだ2日目や。......そんなんであと3日、どうするつもりや。」







侑が行った強化合宿は5日間。

今日は2日目で、あと3日侑がいない練習が続く。




マネージャーの名無しが部に及ぼす影響は小さいようで、実は2番目に大きい。

......1番目は侑なのだが。



そんな名無しの集中力がこれでは、部全体の練習の質が落ちかねないのだ。




「........き、気合で.....。」






北「......気合でどうこうなるなら、声かけてへんわ。」






「......うぅ...。」



きっぱりと北に正論を言われた名無しは
何も言い返すことが出来ず、がっくりと肩を落とした。
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