東京喰種 

□ねえ、聞いて
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「ねえ、聞いて。久生くん。」





俺の肩を人差し指で突く彼女は、不機嫌そうに頬を膨らませる。



彼女...名無しさんは俺の恋人。


俺に恋人がいると聞いた時の米林の顔はこの世の絶望を見たようなものだった。

それくらい、意外だったらしい。




俺だって、仕事に集中したいし興味もないから、恋人が出来るとか思ってもなかった。


けど、対策局で彼女を一目見た時。
どうしようもないほど、胸が高鳴った。

一目惚れは、これのことを言うのかと確信したほどに。





「......聞いてる?久生くん。」





後ろから話をしていた名無しさんはソファーに座る俺の前に立つ。

新聞から目を離さない俺が話を聞いていないと思ったのか、彼女は隣に座って顔を覗き込んだ。


ぱちぱちと何度も瞬きをして、俺の視線の先にいようとウロウロする。


それが、とても、とても可愛らしい。






瓜江「......今日も、かわいいですね。」



「.........うん?なんの話??」






さっきまでの話が上司への愚痴だったせいか、不機嫌な顔のまま首を傾げる。

もう一度「かわいいです。」と強く言うと、眉間に寄っていたしわがゆっくりと無くなっていった。


新聞を畳む隣で不思議そうに自分の頬をさすりながら「......かわいい...?」と小さく呟いて照れる。

だんだん赤くなる頬がまたかわいい。




俺が新聞を手から離したのを確認すると、やっと構ってもらえると言わんばかりに目を輝かせる。

両手を広げてみると、思いっきり飛び込んできて俺の胸に頬を寄せた。






「ふふふ......ねえねえ、話聞いてよー。」

瓜江「...はい。聞きます。......いつでも。」






上司への愚痴でも、うまくいった仕事の内容でも。

なんでも聞く。貴方なら。


少しでも長く、隣に座っていたいから。
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