長編
□05
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盗賊との戦いが一段落ついた。
あれから少し時が経ち、町の人の様子は、盗賊が来る前の活気あるものへと戻ったそうだ。
私はそれを聞いた時、たまらなく嬉しかった。
また、それ以外では、隆国軍長と少し仲良く(?)なれたこと、あまり交流の無かった鱗坊軍長、干央軍長、同金軍長と言葉を交わせたことなど、個人的に嬉しい事も。
しかし、それとは逆に、少し困ったこともある。
毎日、悪夢を見るようになった。
日常生活に支障は出ていないので、大丈夫ではあれど、正直恐ろしくて堪らない。
…それと、王騎将軍に約束通り、私の事実を話す時が来てしまった。
それも、今から話さねばならないのだ。
………困った。
目の前には、策を話したあの日同様、王騎将軍のみ。騰副官は前のときのようにどこかで聞いているのかもしれない。
「…」
息を吸い込み、吐き出す。
「…私の話は、正直とても信じ難いと思います。頭がおかしいと思われる事も承知です。ですが……どうか、信じて聞いてください。」
「ンフフ、わかりました。」
王騎将軍が返事をしたので、そっと話し始める。
「まず、お話すべきは、私は、この時代、この世界の人ではないということです。海の向こうにある島国、日本という所で生まれ、今よりずっと先の時代の世で生きてきました。そこに本当の家族がいます。」
少し俯いて、すぐに顔を上げた。
「…私は、旅に出た最中に突然ここに来ました。どういう訳か、現在の父である陵安の元に。夢という可能性も考えました。…すぐにその考えも消えてしまったんですが…」
どれだけ時が過ぎようと、何を行おうと、元には戻れなかった。
…絶望も、恐怖も付き纏った。
「私は、父陵安の養子として今こうやって生きています。本当の家族の……元の世界に帰りたいと思いますが、帰り方がわからない以上私はここで生きるほかありません。私は、その日が来ることを信じながら、今できる何かをしていくだけです。」
「あなたらしいですねェ。」
「そ、そんなにですか?…それしかないと思ったので。」
ニヤリとこちらを見てそう言う王騎将軍は、その表情のまま言った。
「…ンフ、しかし、あなたが帰りたいと思うほど、この先の出来事は恐ろしいですか。」
「え…?」
"この先の出来事は恐ろしい"
王騎将軍はそう言った。この人は、私がずっと先の時代の人間だと言っただけで、この時代の出来事を知っていると理解したのだ。
私からそういった重要な情報を聞き出すつもりはないのだろうけど、瞬時に察することができるのは正直恐ろしい。
「…その、否定はしません。私は、この手の話を喋っていいのか判断ができませんし、それに…私の知っている流れと、ここでの流れが合っているかわかりませんから…」
私が知っているのは史実の流れ。
しかし、この王騎将軍が出てきているということは、ここはあの有名な漫画、キングダムの世界であり、史実の世界ではないということだ。
私は色々な国、時代の研究に没頭していたので、キングダムのストーリーがどういうものだったのかはあまり覚えていない。
「中々に興味深い話ですねェ。ですがこれ以上は聞かないでおきましょう。あなたの言う流れというものはわかりませんが、聞いてしまっては面白くないですからねェ。ココココ。」
「面白く…ははは……ありがとうございます。」
理由はどうであれ、安心した。
王騎将軍は私が不安に思うような人ではなかった。きっと人が違えば無理やりにでも吐かされていただろう。例え信じがたい話でも、当たっているならば、国にとっての災厄を全て回避できるかもしれないのだから。
私は、思った以上に危険かもしれない…
こういう情報は隠しておこう。
「ココココ。…名無しさん、くれぐれも気をつけなさい。誰が危険かも既にわかっているでしょうが、隙を作らないことです。」
王騎将軍は忠告してくれた。
誰が危険なのかは大体わかる。
…呂不韋という存在は真っ先に避けたいところ。
陵安は呂不韋と面識がある。
いや、親しいのかもしれない。
…まあ、回避できるのか、わからないが。