車と銃と、それから貴方

□ベーグルサンドとソイラテ
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「そういえば、柚音ちゃんって同世代の男には興味ないの?」

今日は皆それぞれアジトを出払っていて、昼食にとカフェに寄ったらたまたまルパンと会った。そのままルパンと一緒にご飯を食べることになって、天気も良いし、外のテラス席を選んだ。


昼食のベーグルサンドを頬張りながら、テラスから見える行き交う人を眺めているとルパンにそう聞かれた。
カフェの外には私より年下そうなカップルだか夫婦だかも数組見えた。あれを見て気になったのかもしれない。
あ、ここのローストビーフサンドおいしい。今度、次元に買っていってあげよう。


「うーん…あまり興味ないのかも…たぶん。」

「なんでよ?」


ベーグルサンドを片手に持ち直して、ソイラテを一口含んでベーグルに奪われた水分を補給する。


「表の人だと、どうしても軽薄に見えちゃうからかも。
同世代とか年下だと尚更。バカにしてる訳じゃないんだけどね。」

「なるほどねぇ。」

「同世代の人でもいいのかもしれないけどさ、もう沢山ドス黒いモノ見てきちゃったから、なんていうのかな?人間の汚い部分を知りすぎてて、人生経験で噛み合わない所が多いと思うんだよね。」

「ま、分からなくもねぇなぁ」

「裏社会の真っ黒い所を知っていて、それに慣れちゃったから、やっぱり今更表社会に普通の人間として溶け込めるとは思えないからね。私は手も足も真っ黒だから。」

「そんなもんかぁ…でもなぁんでまた次元ちゃんなの?」

「そうだねぇ…表に馴染めなくて悩んでた時に出会ったからかなぁ。裏社会の真っ黒い部分を自分が染まるくらい知ってるのに、真っ直ぐ前を向いて自分を貫いて自由に生きてるのが、素敵だなって思ったの。私もいつかそうなりたいって、一緒にいたらそうなれるんじゃないかなって思ったの。」


これはルパン達に初めて会った日に少し思ったこと。
柚音はにっと笑ってルパンを見た。


「そうか。でもよぉ、それなら俺っちでも良かったんでないのぉ?」


ふっと笑ってから、茶化すようにルパンはそう言った。


「うーん。それはね、私子供っぽいところがあるから、大人の余裕っていいなーと思って。次元って余裕があって包んでくれる所があるし、変に大人ぶらなくても、真っ直ぐ自分のままでいられるから落ち着くんだよねー。」


あったかくて、優しくて、すごく頼りになるし…
そう語る柚音は、穏やかで、とても幸せそうな顔をしていた。
満ち足りているとは正にこの事だろう。


「次元と付き合うようになってから、柚音ちゃん、女の子らしくなってきたよなぁ」

「そう見える?」

「そりゃあもう襲いたくなっちまうくらいには!」

「あはは。やめてよねぇ」

「わーってるよ。柚音ちゃんに手出しちまったら俺、次元にハチノスにされっちまう」


”あーんな独占欲の強いガンマンやめて、俺にすれば良かったのになぁ”と唇を尖らせるルパン。


「ルパンとだと、仲の良い友達って感じになっちゃうと思うんだよね。口喧嘩したら、お互いに意地を張りすぎてしばらく口聞かなそうだし。」


”それに、ルパンは女ったらしでしょ?私、意外と独占欲強いから耐えられない!”とおどけて笑ってルパンを見た柚音。


「あっはっはー!言えてるぜぇ」


”でもよぉ、次元ともよく口喧嘩してるじゃねぇか”とルパンは少し唇を尖らせて拗ねている様だった。


「あぁ。あれは、なんていうのかな?私が言っていいものか分からないけど、愛情の裏返し?って感じかな」


”本当はそんなこと思ってないって分かってるから”と幸せそうな笑みを浮かべてベーグルにぱくついた柚音。


「だろうなぁ。ほーんと、仲良し夫婦なんだから」


テーブルに頬杖をついて、ルパンがコーヒーをすすった。


「夫婦とかそんなんじゃないよ。」

「息ぴったりで、いいバランスだと思うぜ」

「そう見えるんなら嬉しいかな。でもね、本当に背中を任せてもらえるくらい、私が、次元の弱点にならないくらい強くならなくちゃって思ってる」

「そうか」

「うん」

「柚音ちゃんなら、もう十分アイツに信頼されて頼りにされてると思うけっどもなぁ」

「付き合いの長いルパンがそう言うなら、そうなのかなー」


小さくなった残りのベーグルを口に押し込んで、ソイラテで喉奥へ流す。


「もっと自信持っていいと思うぜ」

「ありがと。ルパンってさ、女の子の相手するの本当に上手いよね」


”お陰でちょっともやもやしてたのも無くなったし、楽しくご飯食べられたよ!”とソイラテを飲み干して、口元をナプキンで拭った。


「またいつでもどうぞ、お姫様」

「女ったらしな所もルパンの良い所だよね」


恭しく手を添えて腰を折るルパンに”じゃ、また後でね”と手を振ってからトレーを持って席を立った。




end.

実はこのお話、数年前に書き上げてはいたのですが、手違いでアップ済みのリストに入ってしまっていた作品なんです。

お恥ずかしながら、ずっとアップしたつもりでいました。

エピソード0を見て、うちのヒロインならどう感じるかなと考えた時にこのお話を思い出して、サイト内を探したところアップできていないことに気づき、今回ようやく皆様のお目に触れることとなりました。

エピソード0をヒロイン視点でどう感じているかも、いつかUpに追記という形であげたいなと思っています。







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