短編
□満月の夜
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「縁談?」
「信長様に?」
「さくら様ご存知じゃあなかったんですか?」
「凄い噂ですよ?」
台所でお手伝い中に女中たちから聞く
______そうなんだ・・信長様が・・
この日一日中この事が頭から離れない
信長様・・・
私には関係ない・・信長様がどうしようと・・の・・はずなのに
「眠れない・・」
月明かりが今日は妙に明るいからかもしれない
布団から出て月明かりに誘われて外に出てみる
月の柔らかい光に照らせれる庭は昼間とはまた違う表情を見せる
池の水面に月が揺らめく
「あ・・」
水面に映ったソレに気づき見上げる
「信長様?まだ、起きて・・」
天守の信長様の部屋から灯りが漏れる
____何をしているのかな・・
_____お仕事かな・・
____それとも、例の姫君の事を考えて・・
____________
_____出て来ないかな・・なんてね・・
ふふっ
____何を考えてるんだろ、私・・
自嘲気味に笑いが出る
あ・・・
「・・・噓」
想いが通じた様に信長様が自室の手摺越しに姿を現す
信長様も月に誘われたのか月を見上げる
月に向かって手を伸ばす信長様
手が届くはずもなく無造作に手を下ろす
下から見上げる信長様は黒髪が夜空に溶けてしまいそう・・
間もなく信長様は自室の中に消えた