短編

□満月の夜
1ページ/3ページ

「縁談?」
「信長様に?」


「さくら様ご存知じゃあなかったんですか?」

「凄い噂ですよ?」

台所でお手伝い中に女中たちから聞く



______そうなんだ・・信長様が・・


この日一日中この事が頭から離れない


信長様・・・


私には関係ない・・信長様がどうしようと・・の・・はずなのに


「眠れない・・」

月明かりが今日は妙に明るいからかもしれない


布団から出て月明かりに誘われて外に出てみる



月の柔らかい光に照らせれる庭は昼間とはまた違う表情を見せる


池の水面に月が揺らめく


「あ・・」

水面に映ったソレに気づき見上げる


「信長様?まだ、起きて・・」

天守の信長様の部屋から灯りが漏れる


____何をしているのかな・・

_____お仕事かな・・

____それとも、例の姫君の事を考えて・・


____________

_____出て来ないかな・・なんてね・・


ふふっ

____何を考えてるんだろ、私・・

自嘲気味に笑いが出る


あ・・・

「・・・噓」

想いが通じた様に信長様が自室の手摺越しに姿を現す

信長様も月に誘われたのか月を見上げる



月に向かって手を伸ばす信長様


手が届くはずもなく無造作に手を下ろす


下から見上げる信長様は黒髪が夜空に溶けてしまいそう・・

間もなく信長様は自室の中に消えた
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ