Short

□certainly
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二郎君はかなり面倒くさい。
お兄さん大好きで、お兄さんをバカにする人には容赦なく喧嘩を吹っ掛け勝ってしまう。
そんな二郎君を好きになった部分もあるが、時々とても面倒くさいのだ。




「なあ、さっき兄ちゃんのこと見てたろ」

「え、うん。挨拶したからね」

「……見つめすぎだろ」

「ええー…」



家にお邪魔させて貰った時は必ずお兄さんに挨拶する。
そしてその後二郎君から「兄ちゃんカッコ良かったんだよ!」とエピソードを聞かされるのだが、時々挨拶が長かったり話し込んでいるとこうして文句を言うのだ。
拗ねたように言うから可愛いなと思わなくもないのだが、このモードに入った二郎君はとても面倒くさい。

今日もお兄さんと挨拶をし、部屋に上がる前お兄さんに「もうすぐテストだろ、勉強見てやってくれな」と宜しく言われた。
それに対して「はい。私も苦手な所多いので一緒に勉強します」と返したのだが、どうやら二郎君はそれが嫌だったらしい。
線引きが難しいよ…二郎君。




「えっと…ごめんね?」

「良いけどよ…兄ちゃんに目移りすんなよ」

「しないよ」

「……するだろ。兄ちゃんのがカッコ良いんだから」

「カッコ良いけど、私は二郎君のがカッコ良いって思ってるよ」

「……」

「二郎君?」

「…ハル」




俯いて黙ってしまった二郎君に近付くと、不安そうに名前を呼んで腕を掴まれた。
ああ、今日は何故か重症な拗ねモードだぞ。

拗ねた二郎君を元に戻すには、ひたすら好きなところを挙げたり誉め続けなければならない。
下手するとより拗らせるので慎重に言葉を選んで誉める。
この作業が面倒くさいのだ。




「この前の情報収集だって二郎君が一番有力な情報を得てお兄さんに貢献してたでしょ?難しい依頼だったって言ってたのに凄いよ」

「……でも兄ちゃんが解決したし」

「解決出来たのは二郎君がお兄さんのために沢山情報を集めたからでしょ。そう言うところも尊敬出来るし素敵だよ」



嘘は言っていない。
本心だが、もっと誉めてと強請るように見つめる二郎君を見ると「あれ?わざと拗ねてる?」と疑ってしまうのだ。
誉められたい、好きなところを言われたいのは分かるけど二郎君はそれを口に出さず得る方法を見出だしてしまったから今もこうして行動で訴えている。



「……俺、兄ちゃんの役に立ってる?」

「きっと頼りになる弟だよ。勿論、彼氏としても頼りがいがあるよ」

「本当に?」

「うん。私はいつもそう思ってるよ」

「……そっか」




やっと少し笑顔が戻った二郎君。
私も微笑んで「じゃあ勉強しようか」とテーブルに教科書など並べようとすると残念なことに「まだ、良いだろ」と手を離してくれなかった。
どうやらおかわりするようだ。

最初に乗ってしまった私が悪いのか。
今更何も言えないので、今日も黙って満足するまで二郎君の要望に答えることにした。









あとがき。

タイトルは「かしこまりました」
ビジネスで使われる事が多いようで、業務のようなやり取りになった“二郎君を誉めるタイム”にピッタリな言葉かなと思いました。
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