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□俺を呼んで!
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「鬼龍先輩!」
「どうした、ハル。また破れたのか?」
「ちがいます!ちゃんとお淑やかに?してました!」
「そうかよ」
朗らかな笑顔と優しい手付きで妹を撫でるように触れる紅郎さん。
転校生とは違い、お転婆な彼女はプロデュース科の新たなメンバーとしてやって来た。
初日にどうやら何かあったらしく、それを紅郎さんが助けたようでそれからカルガモの親子のように紅郎さんを見付けると駆け寄り離れない。
そればかりか「お母さんみたい!」と慕っているのだ。
今日も食堂で紅郎さんを見掛けたハルさんが駆け寄り世話をして貰っている。
ママの専売特許は俺のはず!と悔しい日々を送っている。
「今日体育ありました?」
「ああ、四時間目が体育だった」
「やっぱり!先輩見付けて手を振ったんですよ!」
「授業に集中しろ…ほら、こぼしてんぞ」
「あれ?」
「口の回りにも付いてんじゃねぇか」
紅郎さんがグッと布巾で拭ってやると、ハルさんはニコニコして「ありがとうお母さん!」とお礼を言って「お母さんじゃねぇ」と怒られていた。
何が不満なんだ紅郎さん!
結局、二人のやり取りを近くの席から見守り「ああ、またこぼしてる!」「袖にご飯粒が!」とモヤモヤしたまま昼休みは終わった。
何故ハルさんは俺に懐いてくれないのだろう?
俺ならママと呼ばれて喜ぶのに。
▽ ▽ ▽
放課後、陸上部も休みだし何をするか?と考えながら歩いていると重そうな荷物を持ったハルさんが居た。
「ハルさん!そんな重い物を一人で運ぶのは危ないぞ!ママが手伝ってあげよう!」
「あ、三毛縞先輩。ありがとうございます!」
惜しい!本当は「ありがとう、ママ!」と言われたかったが仕方ないか。
荷物を受け取り何処に行く途中だったのか尋ねると「被服室」と返ってきたので
、衣装の作成か?一人で大丈夫だろうか?と心配になった。
「一人で衣装を作るのか?」
「はい。昨日、鬼龍先輩にアドバイス貰ったので早速実践しようかと」
「ならママも手伝おう!一人でこの量は大変だろ?」
「い、いえ!それは悪いので、三毛縞先輩は他の方を手伝ってあげて下さい」
やんわりと断るハルさん。
いつもそうだ。俺が声を掛けると遠慮して「はい」と言われた事がない。
俺だって手伝えるのに。彼女の力になれるのに…。
「三毛縞先輩?」
「…俺はハルさんを手伝いたいんだ。今日は引かないぞ」
「…え」
「紅郎さんのが裁縫は得意かもしれないが、ママにも任せなさい!」
「…ありがとうございます」
やっと俺の申し出を断らず、はにかみお礼を言ってくれたハルさんに一歩進めたか?と嬉しくなり抱き締めようと近付くと距離をとられた。
何故だ!?
その後、未だにママとは呼んでくれないが段々と断らなくなったハルさんに紅郎さんからママの座を奪還する日はそう遠くないと思った。
呵々大笑!