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□天然危険人物取扱中2
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毎日花を見ていた。心が休まるから愛でていたのに、いつの間にかその時間は俺の一人言タイムになってしまった。

花だって美しくない言葉を聞くばかりではストレスだ。だからかな?手入れはしっかりしていたのに枯れ始めた。
ちょっと待って、君が枯れたら俺はこの気持ちを何処に吐き出せば良いの?お願いだから枯れないで。

自分のために枯らしたくない。そう呟いたら花はうんざりしたのだろう。もう解放してくれと言う意味で、俺に最適な人物高成を連れてきてくれた。



あれから、何処に溜まっていたのだろうと思う程、長時間スムーズに愚痴を溢した俺はいつになく上機嫌だった。
最近では部活内で無理難題を押し付けることもなくなったし、全体的に好調だ。
こんなに穏やかなのは高成のおかげかもしれない。

今日もお昼に高成と話そう、と思いながら教室へ入ると、いつもは既に着席している高成がまだ来ていなかった。
おかしいな、遅刻なんてしないのに。
何かあったのかな?と少し気にしつつ授業の準備をしていると担任が教室に入ってきて出席を取り始めた。
あーあ、完璧遅刻だ。ふふ、急いでいるなら無駄だよと送ってやろうとメッセージを作成する。


「………高成は、風邪で休みだ。お前らも気を付けろよ」

「え…?」


思うより大きな声が響いて、担任だけではなく他の生徒も俺を見た。
雷に打たれたような衝撃は初めてだ。
高成の名前は飛ばし出席確認は終わったからおかしいとは思ったけど、まさか風邪なんて…なんでバカなのに引くんだよ。

言いたい事が次から次に溢れて、一々それをメッセージで送った。気付いたら返事のないまま20件以上送っていて、何で返事しないんだよ!と少しイラッとした。
その日は1日全く面白くなかった。
高成が居ないから愚痴も溜まるし、部活に行ったら赤也に怯えられて試合も途中で逃げられた。
これも全部高成のせいだ。


▽ ▽ ▽

結局、高成はあれから2日休んだ。
初日の夜に、昼間散々送ったメッセージの返事を「ごめん、寝てた。明日も休む」で片付けられたので電話をかけてみたらシカトされた。
休み明け覚悟しろよ。ノートだって見せてやらないからな。
イラッとしたままそう送ると「ノート見せてくれたらいくらでも話聞く」と返ってきたから、うっかり全部貸してしまった。上手くのせられた。

昼休みはいつも通り屋上で俺が話し、高成が大人しく聞く穏やかな時間を過ごした。
高成はノートを写しながらだけど、ちゃんと返事をしているから良い。
そんな穏やかな昼休み2日ぶりで嬉しく思っていると、高成は小さくくしゃみをした。


「…まだ、治ってないの?」

「いや、今のは単にむずむずしただけ」

「本当に?俺に移さないでよ」

「あはは、幸村なら大丈夫だよ」

「それどういう意味かな?」

「ウイルスすら受け付けない屈強な細胞をしていそう」

「バカも風邪を引くんだから分からないよ」

「迷信だからね、それ」

「高成のもそんなもんだろ」

「え?」


何言ってんの?的な目で見られたから「ノート貸さないよ」とにっこり笑って言ってやると「愚痴聞かないよ」と言われてしまい、仕方なく引き下がった。卑怯者め。

 
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