夢を語って、青に堕ちる
□第1章
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「みんな、ちょっといい?ジュース飲みながら聞いてね。」
カノンちゃんが、楽しそうに秘密の作戦を話す。
「楽しそう!」
思わず小声で感想を言う。
「やろうぜ。」
「僕も賛成。」
「私もよ。」
「そう?さて、部長。最終決定権が君にあるのだけれど、どういたしましょうかね?」
カノンちゃんは、意地悪を思いついたような、可愛いけどあくどい笑みを浮かべ、ショウマに聞いた。
「やらねえわけがねえだろ?」
子どもって、楽しくてたまんないわよね。
さて、カノンちゃんはポケットからメモ帳を出し、シャーペンで何かを書き始めた。
私たちは足元を確認したり、周りを確認したり。
左側の奥に行けばいいのよね。
イツキが一応他のお客様に確認する。あ、あってるらしいわ。
口論してる方々は、周りの迷惑にならない声で延々と言い合っている。変な気遣いね。
カノンちゃんが二枚の紙を私に渡してきた。それを二羽の鶴におる。私がこの中で唯一鶴を折れるのよね。
折ったものを本人に渡す。一羽は彼女の息が吹きかけられ、命を得たように羽を動かし、ジュースを持ってきてくれた店員さんのもとへ。気づいた彼は、こちらに頷いてくれた。カノンも私たちを見て頷く。
『恥ずかしくないんですか?』
さあ!小さな小さな魔法を仕掛けましょう?みんなが使えたはずの魔法を。大人が忘れてしまった魔法を。〈悪戯〉という、笑顔のための魔法を!
『そんなおこちゃまみたいなことで言いあっちゃって。イギリスの魔法使いの方って、そんな大人しかいないんですかねえ!』
『まさか!スニベルスだけだよそんなの。』
『ことの始めはお前からだ。何を言っているんだお前。』
『わお、聞いたかいパッドフッド!あのスニベルスが言い訳言ってるよ!』
『そこですよそこ!』
カノンが戦いを煽ったのか止めたのかわからないが、口論は止まらなかった。
そこに横槍を入れる、正義の顔をした彼女はとってもかっこいい。
席からかっこよく立ち上がり、立って口論しあっていた二人の間に入る。
『日本の子どもも、お互いに原因は全てお前だというんです。もちろん、心が子どものままの大人もいますよ?ああ、あなたたちのことでしたか!失礼、ほかの大人の方々には申し訳ないことを言いましたね。ごめんなさーい。』
そう言って彼女は笑った。
ドッと笑い出す関係のない人たち。いつの間にかみんな聞き入っていたらしい。
私たち五人を気にしていないらしいので、すばやく机の下を通り、そのまましゃがんでダイアゴン横丁の入口へ。
『ほう?Ms.アカシド、教師にお説教かね?』
『へえ!こんなところで先生という職業を使うんですねぇ!一人の子どもとして、大人のなりそこないに物申してるだけですが?』
また観客は笑い出す。いい調子。
『やーい!子どもに怒られてるじゃないかスニベルス。』
『おや?先生の言うとおり、あなたが始めたことなのでは?自分がした悪いことは全部忘れるなんて、本当に子どもですねえ!』
笑いが絶えない中、大きな声で話し出す。煽りすぎな感じもするような?
『おいおい、お嬢ちゃん。大人にそんなこと言ったら、痛い目見るぜ?』
『そうなんですか?でも、大人には見えないけどなあ!子どもに杖を突き付ける時点でね。それに、』
ダンっと、何かが倒れた音がして、一瞬静かになったが、今度は拍手に包まれてる。称賛の声も聞こえる。あ、Mr.スネイプがこっちに歩いてきた。
『大人の顔した子どもも、大人の顔をしたバケモノも、飼い方は熟知しているので。問題ありませんよ。』
まったく、あの子はいっつも決め台詞が似合っちゃうんだから。