夢を語って、青に堕ちる

□プロローグ
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散々だった

泣き真似が上手い母
すぐに手が上がる父

そして彼らに心をズタズタにされた兄さん
私はあいつを守らなきゃならない

バケツをひっくり返したように水が私に襲いかかり、分厚い制服を濡らす

いや、ならなかったんだ
でももう全部いいや

紙を見せた途端、泣き真似がリビングで鳴り響いた。
私の体から真っ赤な薔薇の花びらが飛び散った。
出て行く、と言ったんだっけ。

透明な滴とどす黒い液体が混ざり、重力に従って流れ落ちる。

自分の部屋に駆け上がってまとめてあった荷物を持って、兄の部屋のドア前に立った。
コンコン、ドンドン
返事は無かった

コンクリートと水がぶつかる音がする。

いるはずだとドアを開けたら兄は浮いて、揺れていた。

ギー、ギー、ギーーー。

可笑しな音が鳴り響いていた。

おーい、おーい。
返事が返ってくるはず無かった。
でも、話したかった。
ただいま、あのね。

声が聞こえる。でも、濁流の轟音に飲まれて聞こえない。

その後は、言葉が続かなかった。
胸が、熱くなった。

背後には、泣き真似上手の女がいた。
そいつはザマァみろと笑った。

だからさ、私は言ってやったんだよ。


サヨーナラ、化け物。って


重力が無くなって、私達は濁流の中に沈んだ。
何も、無くなった。
何も、無いよ。
ねぇ、
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