夢を語って、青に堕ちる
□第1章
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ただ、嫌だと思った。
なんかよくわかんないけど嫌だった。
直感的に叫んだ。
サキも、イツキも、ショウマも、トウヤも叫んだ。
「こら。」
幼児を諭すようにカノンが声を出した。
と、同時にドサドサッドタッバタンと大きな音がした。
反射的に頭を手で守る。
何も落ちてはこない。
「皆んな、顔、上げていいよ。」
恐る恐る前を見る。
「え?」
誰の声かはわかんないけど、その一文字の通りだ。
大の大人二人が目を開けてびっくりしてる。
そりゃそうだろう。
本とか、よくわかんない小物とか、でかい家具とかが落ちたり、傾いたりしてる。
周りを見てもそうだった。
あ、後ろに人いたんだ。おばあさんもポカーンってしてる。あ、ターバン巻いてる人ぶっ倒れてる。
って、違う違う。どういうこと?
「いい?これが魔法。さっき、このお城、立派な世界遺産みたいに見えたでしょ?」
カノンの言葉に五人全員がうなづく。
「じゃあ、魔法使いの卵って証拠だよ。こんな都合良く揃ってたら、逆に怖いなぁ。」
「よ、よくわかんなーい。」
トウヤ、機械みたいな声出てる。感情こめなさい、感情。
五人の思考がフリーズしたまま、カノンが大人と話し合っている。
いつの間にやら机の上に乗っていたリュックの中からカノンは、杖を取り出してヒュッと振った。
以前、遊園地で買ったのだ、と見せてもらったことがあるおもちゃだ。所持金の3分の2を使い果たしたんだとも言っていた。その金額に相応しい重量と凝ったデザインで、自分の誕生日の杖でもあると。まあ、デザイン的には死の呪文なるものが一番お似合いらしい。そんな、物騒な呪文、あってたまるかって感じなんだけど。
散乱していた部屋が綺麗に片付いていく。
えーっと、今は、とりあえず、六人揃ってることに、感謝すれば、いい、のよね?