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□Let's go to sea!!
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「名無しさんはどう?」

「海かぁ。」

広間で女子会をやっている最中、最近のゲームの話から誰が言い出したか海に行こうという流れになった。

全員行くみたいだし、ここに来てからはいつも走ってばかりでたまには思いっきり海で遊ぶのもいいかもしれない。

「うん、楽しそうだし皆と一緒なら行きたいな。」

「決まりね!」

どうせならサバイバー全員で行こうよ!

ならハンターの皆も呼びましょうか。

わいわいとまた一段と盛り上がっていく会話に相槌を打ちながら微笑む。
こんなに大勢で行く海なんて初めてでとても楽しみだ。



繰り返し響く波の音、太陽の光を反射してきらめく水面に真っ白な砂浜。

海だー!!

ひゃっはぁぁ!!

「ちょっと皆はしゃぎすぎじゃない?」

「ふふっ、確かに。でも荘園の中はかなり暑かったから…よし、できた。」

「ありがとう。まぁ、無理もないわね。」

ウィラの言葉に同意する。生き返ったかのような皆の笑顔がとっても眩しい。
私たちはパラソルの下で日焼け止めを塗りあいっこ中だ。

今日、荘園ではタイミングを見計らったかのように空調設備が故障した。朝から館の中は蒸し暑く、海は浜風があってまだ涼しい。私たちが涼むには最高の場所だった。

「水着、とっても似合ってるわ。」

「ありがとう!」

「彼を意識したんでしょう?」

…ばれてたかぁ。指摘されるとちょっと恥ずかしい。

素直にせいかいだよと伝えると、可愛いんだから!と軽く背中を小突かれる。

水着は白ベースのホルタービキニで胸元と腰を縁取るレースは黒。トップにはワンポイントで黒のリボンがついている。

「ウィラこそすごく似合ってるよ!ほんと何を着ても綺麗。」

ウィラの水着は黒ベースのクロスホルタービキニ。ワンポイントで入っている紫が彼女の色気をさらに引き立たせている。

「名無しさんに言われると嬉しいわ、ありがとう。…ほら、できたわよ。私たちも行きましょ!」

「ありがとう。うん、いこいこ!」

海に来てからウィラも楽しそうだ。
着ていたパレオを外して2人で砂浜に走る。

「はぁぁ…海、さいっこうだな。」

「…そうですね。」

「あぁ、皆が楽しそうで何より。」

こちらは別のパラソル。上から順にピアソン、イソップ、イライ。この順番で右から並んで座っているという異様な光景が広がっていた。

「…にしても最高だな…。」

ピアソンの口元はだらしなく歪んでいる。
さっきからその理由を察しているイソップはピアソンと距離を取りイライ側に寄っている。

「…イソップ、俺たちも泳ごう。」

「え」

「ほら、早く。」

肌が焼けるのを避けていたはずのイライが、急に泳ごうと同じく日焼けを避けていたイソップを無理矢理立たせてその場を離れた。

数十秒後、ピアソンの絶叫が響く。

「うぉ?!なんだあの悲鳴?」

「あー…知らねぇ方がいい。」

純粋無垢なウィリアムに変なことは教えまいと器用にもビーチボールを相手陣に返しながら答えたナワーブ。

「エマ!」

「まかせて!」

マーサが返ってきたボールを打ちやすい位置に調整し、エマにトスを上げたが

「「きゃあっ?!」」

ボールは相手陣から大きく逸れ、海で泳いでいた名無しさん達の元へ飛んだ。

「皆ごめんなの〜!!」

「大丈夫だよ〜!!」

申し訳なさそうに謝るエマに皆で手を振り大丈夫だと答える。

「えまちゃん、ボールほるよ〜!はい!」

「ありがとうなの〜!」

美智子が投げたボールを上手くキャッチしたエマはビーチバレーに戻った。

「美智子さんって実は運動神経いいでしょ?!」

「そんなことあらへんよ〜。」

普通くらいやわぁと笑う美智子にトレイシーは驚愕していた。普通のボールならまだしも、空気の入った軽く投げにくいビニールボールを軽々と2、30メートル先の浜まで綺麗に投げたからだ。

「さすがだわ美智子…。」

「うん、すごすぎるよ…。」

ウィラと顔を見合わせすごいものを見たなぁと気が遠くなりそうになる。

「そや、名無しさん、そろそろ無常はん達が来はるよ。」

「え?!」

なぜ名指し?!

顔に出ていたのか、美智子にバレバレよ〜と微笑まれる。トレイシーやウィラもクスクスと笑っている。

こんなに皆にばれてたのかぁ…。

「ほら、近くまで一緒に行ってあげるから。」

「林檎みたいに真っ赤だよ、頑張って!」

「可愛いわぁ。おたのしみやす。」

「うぅ…皆ありがとう…。」

恥ずかしいなぁ、もう。
皆楽しんでるし…。

ウィラに連れられて岩陰の近い砂浜まで戻って来ると、ちょうど謝必安とジャックが見えた。

「ほらほら。」

「っ…謝必安!」

ニヤニヤという効果音が似合いそうな顔をするウィラと本人の近くまで来たことで一気に上がる心拍音。

「名無しさん?!」

「おやおや…これは可愛いらしい。」

仮面を着けていても分かる。ジャックまでこの状況を楽しんでいる。

「じゃあ、おじゃま虫は」

「退散しますか。」

じゃあね〜!!

まるで打ち合わせでもしていたかのように2人の息はピッタリで、私たちを残して去って行った。

ちょっと気まずい…。

「…どう…かな?」

「…とても、とても似合ってますよ。」

「よ、良かった。」

大好きな人に褒められたら、嬉しくてつい笑みがこぼれる。

「私たちをイメージしてくれたんですね。」

「うん…!」

「范無咎にも後で見せてあげないとですね。本当に、とても可愛い…。」

にこりと微笑む彼。そのまま頬に手を添えられ、謝必安が顔を近づけようとした瞬間にピタリとその動きは止まる。

な、なんかすごく視線を感じる…。

そういえばさっきからあんなに騒がしかったのが嘘みたいに静かだ。

2人で視線を感じた岩陰の方を見ると、私たち以外の大半のサバイバーとハンターがぎゅうぎゅう詰めになりながらこちらの様子を伺っていた。

「あぁ!いいとこだったのにぃ!」

「気づかれちゃったわね。」

「残念ですねぇ。」

「ナワーブ!さっきから前が見えねぇぞ!」

「ん、わりぃ。」

「あわわ…。」

「青春だなぁ。」


なんてことだ。

「皆?!」

「…ははっ、そういうことでしたか。」

目が一切笑っていない謝必安がどこからともなく傘を取り出し始めた。

「あ、やべぇ皆逃げろ!」

「うわぁ?!」

「ごめんってば!」

羞恥で顔が真っ赤な私を置いて、阿鼻叫喚が始まった。

「早めに避難して良かった。」

「えぇ、本当に。1度ならず2度までも…。助かりました。」

イライとイソップは浮き輪で浮きながら遠い目でその光景を海から眺めていた。
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