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□死んでもいいと思えたの
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「今日のマップは何だろうね〜」


「できれば公園がいいなぁ」


「公園はフィオナの庭だもんね」


そう言うと、彼女はふふーんと得意そうに笑顔を見せる。


「名無しさんが捕まったらすぐに私が助けてあげるからね!」


「わぁ、頼もしいな!」


今日のゲームの参加者であるフィオナと会話しながらステージが決まるのを待っていた。


「あ!本当に月の河公園だ!」


「やったぁ!」


ハンターとマッチングし、不思議な宙に浮かぶ文字からマップを知ることができた。

フィオナと共に、隣で会話していたイライとナワーブとも頑張ろうねと激励を飛ばしあい、準備完了のボタンを押した。

すると、ハンターも既に準備ができていたようで、すぐにいつものガラスが割れるような音が聞こえて意識がだんだん遠くなる。

どんな仕組みか分からないけど、次に目が覚めるときには対象のマップのどこかに立っていることになる。

できればハンターはハスターがいいなぁなんて考えていると意識は完全に途切れた。






ズシン…ズシン…


遠くから反響する何か重いものが地面に落とされるような音に意識が戻る。


「………公園…じゃない…?」


いつも聞こえるメリーゴーランドのメロディーはおろか、明るいテントの赤白の色も見えない

あたりは薄暗く岩場であり、ここが公園でないことだけは理解出来た。

一歩歩くと妙に足音があたりに反響する…
どうやらここは洞窟か何からしい。


システムのバグか何かだろうか…。私は全く知らない場所に飛ばされてしまったみたいだ。


「…どうしよ」


とりあえず、なんとか自力でここから出なければ…。それに飛ばされたのが自分だけとも限らない。

あと、先程からずっと聞こえる音も気になったので、仲間を探しながら探索をすることにした。





まるでこの洞窟は迷路だった。


しばらく歩いていると、道がかなり入り組んでおり、完全に迷子になってしまった。

誰かも一緒に飛ばされたのかもしれないという僅かな希望でさえも打ち砕かれた。

ゲームに一緒に参加していたはずの仲間達の名をいくら呼んでも返事は無かった。

元々自分がいた場所も分からないので、今はあの重い音がする方角を目指して歩いてはいるものの、一向にたどり着けない


「そろそろ足が…」


いったいどれくらいの時間歩いたか、時計が無いので分からないものの、そろそろ限界だったので座って休憩をする。

システムのバグなら時間が経てば荘園の主が助けに来てくれるかもしれない…。
それに賭けて休んでいると、先程から続いていた音の違和感に気づいた。

…いくら歩いても音が近くなることはなかったのに、今はなんだかさっきよりもズシンという音が鮮明に聞こえる気がした。

重い音が近づいてきている事実に気づいたとき、脳には最悪の答えが浮かんだ。


まさか…これは…足音………?


答えが出た瞬間、その場から走り出す。
少しでも距離を取らなければいけない。


自分達人間とは姿形が違う異形のハンターと荘園で出会ってから、今まで信じていなかった神や妖精、魔法なんてものも信じるようになった。

その異形のハンターのうち、仲良くなった1人に聞いた話を思い出す。

地球には人の数百倍大きなやつや、けっこうヤバいやつがたくさんいると。

捕まったら、きっと私は死んでしまう…!

ここは荘園の外、死んでも生き返れるなんて不思議なシステムは無い。

震える脚に喝を入れ、方向なんて分からないまま無我夢中で走る。

それでも重い音は自分の近くから離れることはなく着いてくる。


「っ…あ…!!」


がむしゃらに走ったせいで、前が行き止まりであることに気づいたときにはもう遅かった。

誘導、されてたんだ…。

間近から聞こえるズシンという重い音が、鬼ごっこの終わりを告げていた。


"人の子よ、顔を見せろ"


脳に直接響くような不思議な声は少し彼に似ている。

しかし、声に振り返ることは死刑宣告と同義だった。私はきっと正気ではいられなくなる。

それでも、振り返らなければ殺されてしまう。


意を決してゆっくり振り返ると、そこには真っ赤な無数の目、目、目……………

肉の削げた無数の足に支えられた青白く膨らんだ楕円形の巨体に埋め込まれた無数のそれは、じっとこちらを見つめてくる…


「…ぁ」


圧倒的な持つ者の前では自分はどれほど無力な存在か

気味の悪い複数の視線にその場を動けない。

逃げなければいけないのは分かっているのに…いや、逃げたところで無駄だろうけれど


"おぉ、人間を間近に見るのは久しぶりだ"


あぁそうですか。私は見つかりたくなかったですよなんて返すわけにはいかない。

大丈夫、まだ軽口を思い浮かべるくらいの余裕がある。私は正気だ。

ギョロギョロと動く赤い目はこちらを嘲笑うかのように細まり見下ろしている。


"我が迷宮に迷い込んだ憐れな人の子よ、私の従僕になるか否か選べ"


これあれだ、Yes選んでもNo選んでも死ぬやつだ。

でも、Noは確実に今この場で殺される気しかしない。選べば目の前の巨体に押し潰される未来が見える。


「…な、ります」


それなら最初から答えはこっちしかない。
何をされるか分からないけど

自分が正気を保てるか、そもそも自我が保てるかも不明だけど、今すぐ死ぬより僅かでも希望がある方を選ぶべきだ。


"よろしい"


その声を聞いた途端に視界はぼやけ、体にだんだん力が入らなくなる。
身体全身がゾワゾワする不快感に襲われながら、意識が途絶えた。
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