ポケモン(長編)ダンデ

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………やってしまった…!!


パチっと目を覚ませば見慣れない部屋のベッドの上だった
…頭がガンガンする…完全に2日酔いだ…!

しかも…俺は服を着ていないっ!!

まさか…いや、ちゃんと記憶はある…
俺は昨夜の女性とヤッてしまった…!
あぁ…俺はなんて事を…!

…名前も知らない、会ったばかりの女性と一夜を共にしてしまうなんて…!


…昨夜、遅い時間までバトルタワーで業務をしていた俺は帰り際にシュートシティ駅で困っていた女性を見つけて声を掛けたんだ…
…その女性が親友でもあるキバナにとても良く似ていて…ほっとけなかったんだ

時間も夜遅かったし…いくら成人している女性とはいえ、夜中に女性1人で街を歩いていては、何かと危ないと思ったんだが…

俺が危ない人間になってどーする…!!

自己嫌悪に苛まれる俺は頭を抱え込んでいた…
…ふとベッドの横を見ると小さな紙切れが目に入ってくる


「…これは…昨夜の女性からか?」


部屋を見渡しても俺以外に人の気配はない
…恐らく彼女が残したものだろう…

…もう部屋を出て行ってしまったのか…

二つ折りにされている紙を開けば、彼女の字で書かれた綺麗な文字が並んでいた


『昨夜は付き合わせてごめんね!
楽しくて素敵な夜だった!

P.S.
初めてとは思えないくらい上手かったわよ笑』


…本当に俺はなんて事をしてしまったんだ…!

…嫌だったわけじゃない…むしろ俺にとっても男としても、高揚する夜だったが…
ってそうじゃないだろう!

…これでは最低な男じゃないかっ!!

最近、徹夜続きであまり寝ていない…
…そのせいで普段より酒が回ってしまった事も原因ではあるが…

…元チャンピオン、現バトルタワーオーナーとしてこんな淫らな事が世間にバレたらホップに顔を会わせられない…!

しばらく放心状態の俺だったが…
…ずっとここに居るわけにもいかない…

…気怠い体を叩き起こしてシャワーを浴びれば重い足取りでバトルタワーに向かった

いつもより覇気のない俺に部下達は心配そうに声を掛けてくる…
心配は有難いが…今はそっとしておいてくれ…

…どうにも気持ちが落ち着かない俺は藁にもすがる思いでライバル兼親友のキバナに「助けてくれ」とメッセージを送った…

…しばらくするとフライゴンに乗ってキバナがバトルタワーに突っ込んできた
俺からのメッセージを読んで急いで来てくれたのだろう…

…キバナのユニフォームが少し乱れていた


「…オーナー様がなんて顔してんだ…?
…大丈夫かよ…一体、何があった…?」


心配そうに俺の顔を覗き込んでくるキバナ
…俺は自分の失態に苛まれながらも昨夜の事をポツリポツリと口に出した


「…キバナ…俺は…昨夜、見ず知らずの女性と一夜を共にしてしまったんだ…!」


「………はっ?」


…長い沈黙の後に出てきた言葉はあっけにとられたキバナの声だった
しかし、次の瞬間…!


「お前、やっと童貞卒業したのかよ?!
ポケモンオタク過ぎて、女に興味が無いんじゃねぇかと思ってたが…
いやー!良かった良かった!
ダンデもちゃんと男だったんだな!」


ケラケラと爆笑しながら、小馬鹿にした様子で話すキバナに俺はイラッとしてしまう


「笑い事じゃないんだぜ…!
…俺はその女性の名前すら知らないんだぞ…!
まさか…酒の勢いでこんな事になるとは…」


「酒の勢いで初対面の女を抱いたのか?!
…ダンデ、意外とやるじゃねぇか!」


ニヤニヤと面白がりながら喋るキバナに真剣に話している俺は溜息を吐いてしまう


「…はぁ…真剣に話しているんだが…」


「俺様、真剣に聞いてるぜ〜?
で、どんな女だったんだ?」


ニヤニヤを抑えられないキバナに話すかどうか一瞬、悩んだが…
女性経験の多いキバナの事だ…何かタメになる話でも聞ければと思って会話を続けた


「そーだな…
まるで君を女性にしたかのような姿だったぞ?
…言動も君に似ていたぜ」


「…え、俺様に似てる女を抱いたのか?
ダンデ…もしかして俺様の事、好…「似ていただけだ!!」


ケラケラと愉快そうに笑っていたキバナが俺の言葉で一瞬、真顔に戻る
そしてキバナが言いかけた言葉の予測がついた俺は慌てて全力で否定した


「…君にとても似ていたからつい気が緩んでしまったんだ…
…普段の俺が女性と酒を呑むなんて有り得ない事は君もよく知ってるだろう…」


「うっわ〜…俺様、超複雑なんだが…
でも、ま、いいじゃねぇか!
…確かにダンデの浮ついた話なんて今、初めて聞いたけどよ…
…その年で童貞の方が恥ずかしいと思うぜ?」


キバナの言葉につい、カッとなって声をあげた


「そーゆー事じゃない!
その女性に対して失礼な事をしてしまったから悔いているんだ!」


「落ち着けって…
…別にその女も何も言ってきてねぇんだろ?
…なら一夜限りで終わり!で、問題ないって」


一夜限りで終わり…?!
そ…そんな軽々しく片付けてしまっていいものなのか…?!

呆気にとられる俺は更に頭を抱え込んでしまう

そんな時…!
俺が頭を抱えているとキバナのスマホロトムが慌しい様子で着信を告げた…


「ジムからだ…もしもーし…
…え?!分かった、すぐ戻る!」


電話を受けたキバナが顔を険しいものに変える


「…トラブルか?」


「あぁ…俺のスタジアムに部外者が入ってきて出て行かねぇらしい…
…おまけにジムチャレンジャーでもないのに俺様のジムのトレーナー全員を負かしたらしいぜ」
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