ポケモン(長編)ダンデ

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え…なに?…この空気…

作り終えた料理を運んで貰おうと思って、双子の兄であるキバナを呼び出したんだけど…
…さっきから私と焦点が合わない…

…てゆーかわざと逸らしてない?

不思議に思いつつも、ソファとテーブルしかないリビングに料理を運んで2人の前に座れば…
…昼間、忙しい店の中でお客さんに対して笑顔を振りまくっていた2人の様子がおかしい…

キバナは目が泳いでるし、ダンデくんに関しては目すら合わせてくれない…

…沈黙の続く空気に耐えられなくなった私は、ダンッ!とテーブルをバネにして勢い良く立ち上がり、スーパーで買ってきた缶ビールを一気に喉に流し込んだ!

突然のテーブルと手のひらが勢い良くぶつかる音と、ゴクゴクと一気にビールを飲み干し始めた私の姿を見て、目を丸くさせるダンデくんとキバナ…


「んー!やっぱ仕事終わりのビールは最高っ!
…2人とも何があったかは知らないけど、今日は打ち上げなんでしょ?
私1人じゃ盛り上がらないわよ!
ほら、キバナ!飲みなさい!」


「えっ!?ちょ、待っ…うっ?!」


湿っぽい空気なんて絶対に嫌!
…そんなの楽しくないじゃない!

2人とも喧嘩してる訳ではなさそうだし、笑ってれば大概の事は何とかなるんだから!

そう思って、私は飲み干した缶ビールをクシャッと潰せば、座っているキバナに馬乗りになって強引に顎を掴み上げて缶ビールを押し付ける

…一瞬、吹き掛けたキバナだけど、私の手から奪うように缶ビールを手に取ればゴクゴクと喉を上下させて飲み干していく…


「ケホッ…ハナ!強引過ぎんぞ!」


炭酸がキツかったのか、少し潤んだ瞳で私は軽く睨むキバナだったが、口元は緩んでいる…


「いーじゃない!
…どーせ私と同じでお酒強いんでしょ?
それとも…妹に勝てる自信がないの?」


「ハッ!上等じゃねぇか…!
おい、ダンデ!ワイン持って来いよ!」


負けず嫌いのキバナは簡単に私の挑発に乗ってギラギラと目を光らせる
…そんな様子を横で見ていたダンデくんは慌てた声でキバナを止めた


「待つんだ、キバナ!
彼女、相当酒が強いんだ!
…君では絶対に勝てないぞ!?
俺と呑んだ時だってウイスキーを何本も空けてたんだぜ?!」


あら…あの時、バーから出るまでダンデくんは相当酔ってたから覚えてないと思ってたのに…


「ダンデ!何、弱気になってやがんだ!
売られたバトルは買うのみだろっ!!」


「それはポケモンバトルの話だろうっ!?」


2人のやり取りが可笑しくって、私はケラケラと笑い声をあげた
本当に仲が良いのね…キバナにこんなに素敵な友達が居てなんだか私が嬉しいわ!

…あれ…?
今、私…ダンデくんの事、なんて思った…?

目の前では煽られたキバナが、2本目の缶ビールに手を伸ばしていた
…それを必死に止めようと眉を寄せてキバナを押さえるダンデくん…

その横顔が一瞬、キラキラしたように見えて私は慌てて2本目の缶ビールを口に付けた

…友達だって彼は何度も言ってたじゃない!

キルクスタウンに連れてってくれたのも、店のOPEN祝いの花だってそれは純粋なダンデくんの優しさ!

…ハッキリと友達だって言われてるのに勘違いする程、私は馬鹿な女じゃない!

自分の思考を振り払おうとグイグイ酒を身体に流し込んでいると、私の腕を少しゴツっとした手が掴んだ


「いくら酒に強いからってそんなハイペースで呑んだら潰れてしまうぞ!?」


心配そうな顔で私を見つめてきたダンデくん…
…けど、すぐにハッとしたかと思えば、掴んでいた手を離してくるっと背を向けられた…

な…何なのよ!?意味分かんないんだけど?!


「お、コレ美味いな!
ダンデも食ってみろよ!」


マイペースに呑んでいたキバナはひょいっと私が作った料理…もとい酒のつまみを摘み上げてはパクッと口に入れる

自分好みの味付けにしたんだけど…
…双子であるキバナにとっても好みの味だったようでダンデくんに勧めていた

…てゆーか…無理矢理、ダンデくんの口に押し込んでる…汗


「むぐっ…!?
……ん!?美味いっ…!
凄いな!ハナは何でも出来るんだな!」


モグモグと口を動かしていたダンデくんは、無邪気な笑顔になって黄金の瞳を輝かせている…

うぅ…そんな真っ直ぐな目で褒められると流石に照れるじゃない…


「そりゃなんて言ったって俺様の妹だからな!
…つっても俺様もハナの手料理は今、初めて食ったけど…
コイツ、俺の家じゃマジで何もしな…
「ちょっと!?何を言おうとしてんの?!」


シスコン気味のキバナが、私を自慢するように褒め出したかと思えば…
…普段の私の私生活を大っぴらにしようとしたもんだから、慌てて止めに入った

その様子にダンデくんも笑いながらようやくお酒に手を伸ばす

…頂いたって言っていたワインを出してくれてさっきまでの暗く落ち着かなかった空気がまるで嘘のように…

…今は笑い声の溢れる温い空間に変わった…
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