ポケモン(長編)ダンデ

□4
6ページ/7ページ



「キバナー?そろそろ帰るわよー?」


「うーん…俺様、ここで寝る…」


すっかり夜も遅くなった頃…
私は散らかったテーブルの片付けと食べ終えた食器を洗って、床に転がっているキバナの肩をゆさゆさと揺らした

…しかし完全に出来上がってしまったキバナは動こうとしない…

ふにゃ〜と気の緩んでいるご機嫌な笑みを浮かべたかと思えば、スヤスヤと規則正しい寝息が聞こえてきた…汗

ちょっと嘘でしょ!?
…終電まで後30分も無いんだけど?!

困った顔をして、この家の主人であるダンデくんに目を向けるも…
…キバナと同じようにソファにもたれながら、真っ赤な顔で眠っている…

はぁ…
…途中で呑むペースを遅くして正解だったわ…

私まで潰れてたらこの2人の面倒、見れなかっただろうし…

…2人が潰れた原因は居た堪れない空気に耐えられなかった私が、ハイペースで酒を呑んだせいだから少し申し訳なかった

ベッドに運んであげたいとこなんだけど…
…生憎、こんなに大きく育ったキバナとガチムチなダンデくんを運べるほどの力は無い

ベッドに置いてあった毛布を2人にかけて、私は自分の荷物からノートPCを取り出した

えっと…今日の来店御礼とトリミングを予約制に変更するってHPに更新して…

…アルバイトも早く見つけないと絶対にお店が回らないわよね…
今日は…キバナとダンデくんが手伝ってくれたからなんとかなったけど…


「よし!仕事終わり!」


カタカタと慣れた手つきでタイピングをしていけば、HPの更新を終えてぐいーっと背筋を伸ばした

フフッ…アルバイトの募集欄にちょーっとした細工をしたのよね〜!

…ポケモンの知識を試した記述問題をいくつか出しただけだけど…
この問題に答えられないようなら私のポケモンサロンで働かせてあげれないし!

…ダンデくんやキバナを狙ったファンがアルバイトに応募してくるかも知れないから意地悪かもしれないけど、これくらいやらないとね!

ちなみに私が出した問題は実戦含め、一般人では答えられないほどの難易度の高い記述問題!

人手は今すぐにでも欲しかったけど…
…リスクは避けたいから致し方ない…


「う〜ん…」


私がPC作業を終えた時、小さな唸り声が聞こえてきて目を向ければ、ダンデくんが薄っすらと目を開けていた

…少し辛そうね…
あれだけお酒を呑んだらそりゃキツいか…

私はスッと立ち上がって、キッチンからお水を持ってきてダンデくんの側に駆け寄る


「大丈夫?…水、飲めそう?」


「あぁ…ありがとう…」


水の入ったコップを受け取ったダンデくんは、うつらうつら気味だったけどコクンとゆっくり水を飲み込んでいく…


「…ごめんね、ダンデくん…
私もキバナもはしゃぎ過ぎちゃったわ…」


苦笑いを浮かべながら謝罪の言葉を口にしたけど、ダンデくんは酒の帯びた赤い顔でジーッと私を見つめてくるばかり…


「…ベッドで寝たら?
ここで寝たら風邪引くわよ?」


「ん…」


酔っている割には、大人しく私の言葉に従ってふらふらと立ち上がるダンデくん
…酒癖は悪くないようだけど、転びそうね…汗

心配になった私は重い彼の身体を支えながら、なんとかベッドまで連れて行った…時だった


「えっ!?ちょ…待って…っ!」


ベッドに倒れ込むように寝転がった彼は、私の身体を引き寄せて私ごとベッドに引きずり込んでいた…!

…しかもまるで抱き枕のように私を抱き締めている…!

逃げようにも重い筋肉のついた彼の腕は、女である私の力ではビクともしなくて…


「ダ…ダンデくん!!?
起きて!起きなさいってばっ!!」


…ジタバタと動いては、なんとか彼を起こそうと試みたんだけど…
眉を寄せてしかめっ面を浮かべるばかりで私を抱き締める腕は更に力が増してきていた…!

く、苦しい…っ…!

圧迫されている身体が苦しくて、思わず私は目の前にあるダンデくんの腕に噛み付いた!
…八重歯が筋肉質な腕に刺さるように食い込んでいけば、抱き締める力が少し軽くなる


「っ…噛んだら…ダメなんだぜ…
リ…ザァドン…」


痛みから顔を歪めるダンデくんは、目を閉じたまま今にも再び眠りに落ちてしまいそうな様子でそんな事を言ってるけど…

私、リザードンじゃありませんけどっ?!


「ちょっと!?
私よ、ハナよ!?」


勘違いしているダンデくんに気付いて貰おうと必死で名前を伝えていたら、ゆっくりと彼の瞳が開いて…
…黄金色の風格ある瞳が私の視線と重なった


「……君は…とても美しいな…」


…私の顔を見て、ふにゃっと笑った彼が発した言葉は…真っ直ぐと私の心臓を貫く…


「…っ…この天然タラシッ!」


…タレ目をバトル時のキバナのように釣り上げてみたが、今の私の顔は間違いなく熟れた赤い果実のように染まっている…
自分の顔を想像して情けないな…と思って泣きそうになった

目の前には…再び夢の中へと落ちて行ってしまったダンデくんの凛々しい顔がある…

あぁ駄目…!
私…彼とこれ以上居たら…
…きっと友人として見れなくなっちゃう…!

…嘘偽りのない純粋な瞳で惜しげも無く、美しいと真っ直ぐ伝えてくるダンデくんに…
…私の心を押さえつけていた歯車が外れ掛けていた…
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ