ポケモン(長編)ダンデ

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…バーに行った私とダンデくんは最初に言った通り、一杯だけご馳走して貰って店を出る

家まで送るってダンデくんは言ってくれたけど、結構遅い時間だったので、ラティアスの背中に乗せてもらうから大丈夫と言って断った

…前から薄々思ってたけど…
ダンデくんって真面目過ぎない?

…この私が大丈夫って何度も言ったのにあそこまで気にする?

同じベッドで一緒に寝ただけなのに…
…気にし過ぎてなんだかガラルに生息しているサニーゴみたいになってたわよ…汗

…そんなところも可愛いんだけど…
って…また私ったら何を考えてんのよ!?
もうっ!ダンデくんは友達!


「…?」


ラティアスの背中の上で百面相をしていたもんだから、自分の主人の妙な様子にラティアスは首を傾げてしまっていて…


「…大丈夫よ、お願いだから気にしないで…」


切実に言った言葉だったが、ラティアスの不審な目はキバナの家に着くまで収まらなかった…


「ただいま〜…」


「お〜!ハナ、おかえり!」


玄関を開ければ、落ち着かない様子のキバナが真っ先に出迎えに来た

…妙だわ…
…いつもは玄関まで迎えになんて来ないのに…


「マサルくんの事、送ってくれてありがとー
…彼って何処に住んでるの?」


「マサルは、普段からスボミーインかキャンプ泊まりばっかりしてるぜ?
…実家はハロンタウンにあるらしいが…」


「へーハロンタウン…
…ダンデくんと一緒なのね」


何気なく返した言葉にキバナがピクッと過剰に反応しては、ジリジリと距離を詰めてきた…!

私の双子の兄だから別に平気だけどさ…
…普通、無言でこんな巨体の男に詰め寄られて凝視されたら、か弱い女の子は泣くわよ…!?

いや…キバナは双子の妹である、私から見ても間違いなくイケメンだし、泣くってよりも恋に落ちる可能性の方が高いわね…汗

てゆーか!…一体、何なのよ!?
言いたいことがあるならハッキリ言って欲しいんだけど!


「…何よ?…通れないんだけど」


玄関の前でキバナが立ち塞がっているせいで、家の中へと入れない私はムッと顔をしかめた


「…ダンデと何処に行ってたんだ?」


「一杯、呑んできただけよ
…私、疲れたからお風呂に入りたいの
通してちょうだい」


キバナの横をサッとすり抜けて、私は早足気味に風呂場へと向かう

パタンッ!と脱衣所の扉を閉めた私はすぐに熱いシャワーを浴びて湯船に浸かり、疲れた体を温めた…


「…何やってんの?」


…タオルで髪を乾かしながら、風呂場を出るとリビングのソファの上でキバナが不機嫌そうに座り込んでいる


「別に…何でもねぇよ」


あからさまにムスっとした顔して何でもない?
…はぁ…分かったわよ…


「…週に1回は必ず帰るから…」


「……約束だぞ」


キバナは私がこの家を出るのが気に入らないと表情で語っていた
…私は表情だけでキバナの思考がある程度なら理解できる…だから双子って面倒だなってたまに思っちゃうのよね…

…流石に10年以上も離れてたから昔ほど的確には分からないけど…

自分の部屋に戻って少し大きめのキャリーバッグに荷物を詰め込んでいく…
新しく住むマンションは家電、家具付きの部屋だから引っ越しにそこまで手間は掛からない

足りないものがあってもシュートシティにあるマンションだからいつだって買いに行けるし…
…街の中心部から結構離れているけど、家にいる時くらいは静かな場所で過ごしたいから妥協したのよね…


次の日の朝、いつもよりずっと早く起きた私はキバナの家から出て、キャリーバッグをカラカラと引きながら始発に乗り込む

…だってキバナに見つかったらうるさそうなんだもん…汗

そして自分が借りたマンションの一室に到着すれば、ホッと肩の荷が下りたような気分がした


「…そーいえば、私…
一人暮らしって初めてかも…!
旅をしてた時は、ホテルかキャンプ泊まりばっかりしてたし…」


そう思ったけど、どっちにしろ愛するポケモンたちと一緒だから心細いといった感情は皆無に等しい

そのまま部屋の片付けを簡単にして、他に生活に必要そうなものはシュートシティの中心部まで行って買い揃えた

…夕焼けが夜空に変わり始めた頃、私は同じ階の住人に挨拶をしようと購入したギフトを片手に各部屋のインターホンを押したんだけど…

…ここのマンション、空き部屋が多いみたい…
中心部から外れてるせいかしら…?

ギフトが無駄になっちゃったなぁ…と思いながら、私は最後に自分の部屋の隣のインターホンを押す
この部屋にも誰も住んでないのかもって思ったけど、扉がゆっくりと開き始めて少し安心した


「こんばんは!隣に越してき…た…
……えっ!!?」


でも、私の安心はすぐに驚愕に変わった…
…隣人もそうみたい…

あー…この顔はよーく知ってるわよ…


「……ハナ…」


…私の名前を呟くように言った隣人は今も目を丸くさせたままだ…


「ダ…ダンデくん…」


きっと私も彼と同じような顔をしているのだろう…と容易に想像が出来た…

…その証拠に私は挨拶用に購入したギフトを手からストン…と落としてしまっていた…
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