ポケモン(長編)ダンデ

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嫉妬心に駆られ、俺は自分の欲を赤裸々に吐露してしまう…
…ハナを俺だけの女性にしたいという身勝手な欲を…

ハナとダイゴが昔、交際していたとキバナから聞いた時は気が動転しておかしくなってしまいそうだった…
…ハナに俺だけを見ていて欲しくて堪らなかったんだ…

気付いた時には正装だと言うのに俺の足は地を蹴っていた
…絡まった理性と欲と感情の渦に俺の思考は、ぐちゃぐちゃに混ざり合って招集がつかない

外に飛び出して少しひんやりとした空気に身体を当てたが、時間が経っても一向に解ける気配がなくて…

…そんな時にハナが俺の前に現れた

…美しかった…
鮮やかに咲き誇った紅い薔薇のような色のドレスから見える褐色肌が見事に調和していて…
…俺を探しに来てくれた蒼の瞳がホッと安心していたのを見て、ぐちゃぐちゃだった頭の中がスーッと溶けるように落ち着いた気がする

しかし…俺の欲だけは消えなかった

今、俺の目の前で…
…ハナの瞳から溢れた涙が頬を伝っている…

俺のこの焦燥し切った恋心と醜い欲を知って、雫を流すハナに胸が締め付けられた…

なに…を…俺は口走ってるんだ…!?
こんなの身勝手過ぎるだろう?!
…彼女を泣かせてまで自分の欲を優先したいわけじゃないんだ…!

俺はただ!…ハナの事がっ…


「っ…すまない…
…俺は今、冷静じゃないんだ…
…忘れてく…れっ!?」


罪悪感が波のように押し寄せていた俺の時が…
突然、ピタッと止まった…

…ハナの小さな唇が…
俺の唇にそっと重なったからだ…

暖かく柔らかい感触がして、ハナの甘い香りが俺の鼻を弄ぶようにくすぐる…
…閉じられたハナの瞳は弧を描いており、端から溢れた涙が流れていた…


「…忘れないわよ…絶対…」


そっと離れたハナの頬が赤い…
…目線を逸らしてモジモジと照れた姿が可愛らしくて俺の心臓の鼓動は激しくなる


「い、今…俺にキスを…?」


柔らかいハナの唇の感触がまだ残っているというのに、信じられない俺は確認の言葉を口走ってしまう…


「…好きな人に好きって言われて…
…キスしたくなったの…
…こっちを見ないでちょうだい…
私…今、絶対に顔が赤いんだから…」


「…無理だ…目が離せそうにない…!」


俺は衝動に身を任せてハナを抱き上げる
さっきまで感じてた不快感はまるで嘘だったかのように消え、目の前で恥じらいの表情を浮かべるハナが俺には女神のように見えていて…


「ちょっ…!?
ダ、ダンデくん降ろし…「降ろさないぜっ!」


ジタバタと動くハナの言葉を遮って、片腕に彼女を乗せるように持ち直せば、グイッとハナに顔を近づけた

落ちるのが怖いのかハナの腕が俺の首に回ってきて、更に俺とハナの顔の距離は縮まる…


「俺の恋人になって欲しい…
…YES以外は受け付けない」


「…YESに決まってるじゃない…
私だって…ダンデくんが好きなんだから…」


…今日は人生で1番、幸福な日なのかもしれない

ハナが…俺の事を好きだと言ってくれた…
…俺の恋人になってくれると…

もうキミは…
…俺だけの女性になってくれたんだ…

近くにあった俺とハナの顔が互いに引き寄せられた磁石のように引っ付いた

あぁ…なんて愛しいんだ…
ハナの存在が俺の全てを満たしてくれる…

…道端で見かけるカップルが何故、あんなにも幸せそうに笑うのか…
キミに出会う前の俺は分からなかったんだ…

…だが、今は理解できる…
ハナが俺を夢中にさせてくれた…
恋を…教えてくれたんだ…

こんなに幸せで良いのだろうか…
…今でも溢れる幸福を感じれているのにもっとハナが欲しいと願ってしまう…

俺は…こんなにも欲深い人間だったんだな…


「んっ…!
…ダンデくん、長い…!」


夢中でハナにキスをしていたら、俺の唇に彼女の華奢な指が置かれた


「…もっとしたい」


「だ、駄目…!
もうポケモンバトルが始まっちゃうわよ!?」


「えっ!?
ポケモンバトルをするのか?!」


キスを拒まれたかと思えば、思い出したかのようにハナが慌てて会場の状況を説明してくる

…全地方のチャンピオンやジムリーダーが集まっている珍しい機会だから、1VS1のトーナメント試合をやるそうだ

誰にも負けるつもりはないが、あのダイゴという男だけは完膚なきまでに叩きのめしたい…

絶対にハナには触れさせたくないからな!
…もう彼女は俺だけの恋人なんだ…!


「ほら、ダンデくんも参加するでしょ?
だから早く戻らないと…」


「もちろん、参加するぜっ!
必ず優勝をもぎ取って来る!」


「その意気よ…ってコラコラコラ!!
そっちじゃない!こっちよっ!?」


くるっと方向を変えた俺の手をハナは、慌てて掴む
…繋がれたら手と手を見れば、恋人らしく見えてしまって…

俺の口元は自然と緩み、耳まで赤く染めたハナの姿に微笑むと同時に少し体が熱い…

くすぐったい幸福を感じながら、俺とハナは会場へと足を進めた…
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