ポケモン(長編)ダンデ

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「今日は忙しかったのか?」


「そりゃ忙しかったに決まってんだ…
…ちょ、ちょっとだけ忙しかったわ!」


あ…あっぶねーっ!!
ダンデ相手だとボロが出ちまう…!汗
口調に気を付けねーと…!

むしろ極力、喋らないようにしねぇとバレる!


「いつもお疲れ様なんだぜ!
…こーやってハナと一緒に帰るのはまだ少し照れ臭いが…」


幸せそうに照れた顔を浮かべるダンデに俺様は少し驚いた

…バトルジャンキーのあのダンデがハナには、こんな顔をするのかよ…?
…ダンデもようやく人間らしくなってきたな…


「えっ!?ちょ…やめっ!」


長年のライバルの幸せを目の当たりにして少しだけホッとした時だった

…ダンデが手を繋いできやがった…!

咄嗟にダンデの手を振り払ってしまった俺は、ハッとしたが…ダンデは少し、哀しげな顔を浮かべ「すまない…」と小さく謝るだけだった

む、無理だ…!
体はハナでも中身は俺様なんだぞ!?

つーか俺様の妹に触るんじゃねぇよ!!
…ってもうコイツらは付き合ってんだよな…
普通に手くらい繋ぐか…

それにダンデはこーやって毎日、ハナを家まで送ってやってんのか?
…妹を大事にしてくれるのは兄としても安心するし、有難い…

ダンデ程、紳士な男は他に居ねぇだろうしな…
…危なっかしいハナにはピッタリの男なのかもしれねぇ…

…なんて考えてダンデに対する俺様の株が上がり始めていたんだが…


「じゃあハナ!また明日!」


…ハナの新住居である部屋に着いて鍵を開けようとすれば、隣の部屋の扉をガチャっと開けるダンデの姿が目に飛び込んでくる…

え…隣同士で住んでんの?…マジで?


「ハナーーー!!どーゆー事だよ!?
なんで隣にダンデが住んでんだっ?!」


「うるさいわねー…
私が引っ越した先にたまたまダンデくんが先に引っ越してただけよ…」


スマホロトムの画面越しに見えるハナは俺様の馬鹿デカい声に耳を塞ぎながら顔をしかめた


「必ず家に帰れってコレかよ!?
ダンデが心配するからって事だろ?!」


「そーだけど?
…ダンデくんって心配性なのよ
毎日、夜は家まで送ってくれるの」


「…俺様の顔でそんな乙女な顔すんなよ…泣」


…少し頬を赤らめてフフッと微笑む自分の顔に吐きそうになる…


「あ、そうそう…
仕事で困った事があったら早めに言ってね?
…こっちはキバナのとこのジムトレーナー達が優秀だからそんなに困った事はないけど」


「お前…今日1日、何してたんだ…?」


「キバナのポケモン達のメンテナンス」


うっそだろ…仕事してくれよ…
…俺様のデスクの上にある大量の書類が見えなかったのか…?

…本来、部外者に見られたらまずいけどよ…


「出来る限りでいいからデスクの上にある書類やっといてくれねぇか?
…あれ、締切が近いんだよ」


「え、終わらせたわよ?
…やることがなくなったからジュラルドンたちのメンテナンスしてたのよ
後、ジムトレーナー達にもポケモンのメンテナンスについて徹底的に指導しといたわ」


「え…俺様の妹がイケメン過ぎる…」


ぽかーんと口を開けた俺様の口から出てきたのはハナに対する称賛の言葉だった

デスクワークは男性に向かないって聞いたことがあるが…
…ここまで差があると少し泣きそうだぜ…汗


「あ、俺様のトレーニングは?
リビングにメニュー表が置いてあるだろ?」


「ちょっと待ってて
……何これ…こんなの毎日やってんの…?」


一瞬、スマホロトムの画面上からハナの姿が消えたが…
…すぐにゲッソリした顔で戻って来る


「俺様のスペシャルメニューだぜ?
あ、終わったらプロテイン飲めよ!
ちゃんと摂取しねぇと筋トレの効果が薄れるし、スポンサーにドヤされちまう」


「…やらなきゃダメ?」


「…やらねーと俺様も頼まれたスキンケアとかやらねーからな
…なんなら明日は化粧なしで仕事に…「やるやる!ちゃんとやるってばっ!」


慌てたハナを見てつい笑みが溢れた
…俺様の顔で頬を膨らませて拗ねても、ちっとも可愛くねーけどな…汗

その日から互いの仕事の近況や私生活の報告が日課となったが…
…ポケモンサロンの仕事に慣れてもダンデと2人きりで帰るのはマジで慣れねぇ…汗

そんな日々の中、ナックルシティにある小さなカフェでハナと待ち合わせをしていた俺は迷う事なく入店すれば…

…ダンデが居やがった…!
しかも隣に居るのは…研究所の姉ちゃんか?

あれだけ大きな声で名前を呼ばれれば、出向かない訳にはいかない…


「え、嘘…すっごい美人さんじゃない…
キバナさんに目元がそっくり…」


「男のキバナよりもハナの方がずっと綺麗に決まってるだろう?」


「ど、どうも…」


あー…なんて反応したらいいんだよ…
ハナ、頼むから早く来てくれ…泣

…ん?ちょっと待て…
なんでダンデと研究所の姉ちゃんがこんな小さなカフェに2人きりで居るんだ…?

…こんな状況をハナが見たら…
勘違いしちまうんじゃねぇの…?汗

…研究所の姉ちゃんもソワソワしてるし…

俺様はこの説明し難い状況に気付いてハッ!として慌てたが…
…背中から大きな影がスーッと入ってくる
恐る恐る振り返って俺様は気付いちまった…

…時、既に遅しだ…
コレは…本気で駄目なパターンじゃねぇか!泣
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