ポケモン(長編)キバナ

□1
1ページ/7ページ



「ここ…どこ…?」


目の前に広がる大自然…
あちこちから聞こえてくる聞き慣れてるような…ないような不思議な鳴き声…
カサカサと草むらが動けばビクッと肩を揺らしてしまった


「ピカ?」


揺れる草むらに目を向ければ黄色いネズミのような可愛らしい生物が首を傾げてこちらを見ている


「…ピカチュウだーーー!
えっ嘘?!ここポケモンの世界?!
めっちゃ可愛いんですけどー!!」


ピカチュウと目が合い、放心状態で目をぱちくりさせていた私が急に目を輝かせて叫ぶもんだから驚いたピカチュウは逃げてしまう


「あ!待って!…行っちゃった…
えーっと私、ゲームしてたはずなのに…」


突然、ピカチュウに会えて興奮状態だったが逃げられてしまったことに肩を落とす

とゆーかそんな場合じゃなかった

一旦、目を閉じて深呼吸してみる

そして目をゆっくり開ければやはり先程見た大自然がいっぱいに広がっていた…


「ピカチュウいたし…やっぱりここ、ポケモンの世界だよね…
…私が生活してた世界と似てるようで似てない感じ…」


突然、自分がポケモンの世界へトリップしてしまった事を徐々に理解できてきた

そしてどうしたらいいか分からない不安感と胸が苦しくなっていくような感覚に腰が抜けて地面に座り込んでしまう…

その拍子に自分が背負っていたリュックからハイパーボールが落ちる

あれ…リュックなんかしてたかな…?

と疑問に思いつつも落ちてしまったボールを拾いあげれば目を見開く

…だってボールの中に居たのは私が一生懸命育てていたサザンドラだったから…

慌ててリュックを肩から下ろし、中身が全て出るようにひっくり返す
地面に勢いよく落ちたのはハイパーボールが4つ、キャンプ道具、折りたたみ式の自転車、そして自分のポッケの中にはスマホロトムがあった

落ちたボールを掴み取り、次々に投げていけばパカっとボールが開き、眩い光とともにサザンドラ、ラプラス、ザシアン、ジュラルドンが飛び出てくる

そして私が可愛がって育ててきたポケモンたちが一斉にこちらに向かってきては放心してた私にスリスリと頬を寄せて甘えてきた…!


「そっか…この子たちは私のことが分かるんだ…
良かった、1人じゃないからきっと頑張れる…!」


自分のポケモンたちは私がゲームプレイ中に厳選してなつき度をあげて可愛がっていたからなのかとても慕ってくれているのがよく分かる

ホッとした私はそのまま暖かいぬくもりを感じながら1匹ずつ頭を優しく撫でてあげた

…ちょっと目がうるうるしてて良く見えなかったのは内緒だけど



しばらくの間、自分のポケモン達と触れ合っていれば辺りは段々と夕暮れに近づいていた

本当は街まで行って今日の宿を探したいところだったがリュックの中を何度確認してもお金がない…

…今夜は野宿という名のキャンプをするしかなかった…

慣れない手つきでテントを張り終えれば辺りはすっかり暗くなっていた

…流石にポケモン達と寝るには狭過ぎるのでボールに戻す

寝袋に入って今日はもうゆっくり寝ようと目を閉じた瞬間、ドシーン!と外で何かが落ちたような鈍い音にビックリして思わず外に飛び出した


音のする方へ目を向ければ人が倒れている

その倒れている人の周りをフライゴンが半ば錯乱状態で飛び回っていた


「た、たいへん…!」


私は慌ててその人に近寄って状態を確認する
ぐいっとゆっくり体を起こせば息はしているようだが意識がない…

夜のワイルドエリアは暗い
月明かりだけでははっきりと顔は確認できないが体つきから男性であることは分かった

横で心配そうに鳴いているフライゴン

この子のトレーナーなのだろう
きっと飛んでる時にこの子の背中から落ちたのかも…

とりあえず生きているとはいえ意識のない人間を放置するわけにもいかない


「大丈夫だよ!気を失ってるだけ
…運ぶの手伝ってくれるかな?」


狭いテントだが体を冷やさない方がいいだろうとテントに運ぶことにした
…が、この男性はかなり身丈が大きく私1人では運べそうにない

困った顔をしてフライゴンに運ぶのを手伝ってもらい、なんとかテントに運んだが彼の足が飛び出ている

…仕方ないので足だけはテントの外で我慢していただこう

自分はテントの奥に入り、寝袋を広げて毛布代わりにして彼にかければ横に小さく寝転がって目を閉じた

大自然の夜はとにかく寒かった
寝ている間に彼の元に擦り寄って暖を取っているのに気付いたのは次の日だった
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ