ポケモン(長編)キバナ

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「ふぁ〜…」


大きなあくびをして腕をぐいーと伸ばす

…よく夜遊びしてそうに見られるが俺様の朝は一般の人に比べればだいぶ早い
チャンピオンであるライバルダンデに勝つために特訓は欠かしたくねーからな…!

その志のおかげで朝は割と得意だ

顔を洗ってポケモンたちに先にフードをやる
…いつもの格好に着替えればまだ起きないサクラに少し溜息が出た


「ま、起きねーとは思ってたけどよ…」


サクラの部屋に入ればやっぱり寝てやがった
早く起きろよって言っただろ…


「んー…なんか起こすの勿体ねーな…」


サクラの近くまでくればスヤスヤと眠る綺麗な顔…
俺様も男だからムラっときちまうんだが…


「サクラ!起きろよ、バトルの特訓するんだろ〜?」


ベッドに腰掛けて肩を揺する
しばらくして上体がゆっくり起き上がった
…何度も言うが目が開いてねぇ


「俺様を待たせる気かー?
さっさと準備してこい!
あ、動きやすい格好で来いよ」


「ふぁ〜…い…」


わしゃわしゃと少し乱暴に頭を撫でれば気の抜けた声を出しながらおぼつかない足取りで顔を洗いに行った

一応、起きたみたいだからリビングで待つか…


「申し訳ありませんでした…」


「…次、起きなかったら襲うからな?」


顔を洗ってようやく覚醒したのか、申し訳なさそうな顔で俺に近寄るサクラ
そんなに長い時間待ってたわけじゃねーからいいんだが…
起きるの苦手って自分で分かってるようでスッゲー落ち込んでるな…

つい、いじめたくなってニヤっとしながら次、起きなかったら襲うって宣言する


「…目覚まし時計、5個くらいあれば起きます!…多分」


「1個で充分だろ…
つーか5個あっても多分かよ!」


あーこりゃ明日も起きねーな…


「んじゃとりあえず走るぞ」


「え!?走る?!ポケモンバトルは…?!」


「ポケモンだけ鍛えてトレーナーが軟弱じゃあ、安心してポケモンも戦えねーだろ?」


「な、成る程…」


外に出てランニングを開始する

…俺様に付いてこれるとは最初っから思ってなかったが…
だいぶペースを落としてもサクラは息が上がっており、荒い呼吸を繰り返していた


「よーし、おつかれさん!
続けていけば慣れるだろうから、頑張れよ」


「…やっぱり毎朝走るんですね…」


キツそうな顔を露骨に出すんじゃねぇ
こりゃマジで1から教えていかねーと…


「次はナックルジムに行くぞー」


「ポケモンバトルですか?!」


さっきのぐったりした姿が嘘だったように今度は目をキラキラさせて俺様を見つめる
期待を裏切って悪いが…


「いや、先に筋トレするぜ?」


がっくり肩を落とすサクラ
コロコロと表情が次々と変わる
ホント、見てて飽きねーな!

そしてナックルジムのトレーニングルームへ移動する

最初から器具を使わせたら怪我しそうだから、とりあえず簡単な筋トレ方法を教えてやらせとく

俺様はジムにある簡易冷蔵庫から美味しい水を取り出してプロテインと混ぜる
サクラの分も用意しておいた

今日はランニングがローペースだったからな…
筋トレはガッツリやりてぇ

いつものように器具を使って集中してトレーニングをする


「キ、キバナさん…終わりました〜…」


しばらくしてぐったりした様子で俺様が教えたメニューをこなし終えたサクラ


「お!偉い偉い
よく頑張ったなー!」


普段トレーニングしないだろうから相当キツかっただろうな
それでも弱音を吐かずにメニューをこなしたサクラ
相当バトルがしたいんだと察した

プロテイン入りの俺様の特製ドリンクを渡しながら褒めてやったら疲れてるはずなのにニカっと笑ってくる


その時、トレーニングルームのドアがガチャっと音を立てた

俺様のジムのジムトレーナーたちが出勤してくる時間だからな

だが、ジムトレーナー達は部外者がジムのトレーニングルームに居る為、驚いたような顔で唖然と立って動かない

…俺様、ここに誰かを連れてくることなんて
一度もなかったし、当然か…

ダンデがたまに勝手に入ってきてトレーニングしたりする事はあるがアイツは有名人だし、顔パスみたいなもんでジムトレーナーたちは気にも留めない

むしろチャンピオンが来るのを心待ちにしてるくらいだ


「あーコイツ、サクラって言うんだ
俺様の推薦でジムチャレンジすっからお前たちも鍛えてやってくれ」


「サクラって言います!
ご迷惑をお掛けする事もあるかもしれませんが宜しくお願いしますね」


ペコっと頭を軽く下げるサクラ

びっくりした顔のジムトレーナーたち
ざわざわと落ち着かない様子だ
中にはキッとサクラを鋭い目で睨む奴もいる

俺様が推薦状書くのは初めてだからそりゃそーだろうな
俺様が鍛えてるジムトレーナーですら推薦状は書いていない
俺様に勝てたら書いてやると言ったことはあるが勝てる奴はいねーし…


「お前たちの言いたいことは分かる!俺様に勝てたら推薦状を書く!
そう約束してたからな…ま、コイツのポケモン見りゃお前たちも納得するさっ!」


ジムの雰囲気を壊さないように明るい声でニカっといつものように笑ってみせる


「いつも通りメニューをこなせよ?
トレーニング開始だ!!」


納得がいかないような顔をしてるジムトレーナーも居たがトレーニング開始だと圧のある声で一括すればそれぞれトレーニングをし始めた

…ジムトレーナーからの視線が集まったサクラはあまり歓迎されてないと察したのか不安そうに立ち尽くしていた

…こーなるのは分かっていたが、ジムチャレンジは甘くない
サクラのポケモンたちなら問題はないがサクラにはトレーナーとしてライバルが大勢居ること、お前がやりたいと意気込んだポケモンバトルの世界を全て見せて学ぶ必要がある…

俺様が推薦状書くんだぜ?
…半端になんてさせたくねぇ

不安そうな顔をしてたから怖気付いたか?なんて思ってチラッと横目でサクラを見たら肩を震わせている

…こりゃ…ダメかもしれねぇなって思った

が、急にサクラが声を上げる


「キバナさん!私、頑張りますから!
ポケモンバトルやりたい気持ちは変わりません!」


…無理かもしれないと俺様が先に諦めかけてたぜ…
コイツの肩が震えてたのは武者震いだ

キリッとした目で俺を見つめてくる
不安が全て消えたわけじゃねぇみたいだがやる気は失われてない


「あったりまえだろ!
俺様が最強のトレーナーに育ててやるぜ?」


ニカっとわくわくした顔を見せてバトルフィールドへサクラを連れ出した
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