ポケモン(長編)キバナ

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一昨日、俺はまさかサクラが未成年だとは全く思わなくて故意ではないにしろ、酒を飲ませてしまった…

しかも彼女はかなり酒を受け付けない体質のようで2.3杯しか飲んでいないはずなのにぐったりとしていた…

俺は心配して駆け寄ったが、ふにゃりとしていたサクラは俺に向かって倒れ込んできたし…

…あの潤んだ瞳に色気のある赤い熟れた表情がいまだに頭から離れてくれない…

突然のことにパニックになってしまっていたからキバナが入ってきてくれて助かったんだぜ…
…すごく怒られたがな

…だが、チャンピオンである俺が未成年に飲酒させたなんて知られたら大問題になる…
…今後は気をつけなければ…

それに…あんなに怒るキバナは久しぶりに見たような気がする
…まるで本物のドラゴンのようだった…

…相当大事にしている子なんだろう

俺も初めて見ただけで心を奪われたからキバナが大事にするのも分かる…

しかし、負けるわけにはいかない
…どんなに不利な状況でも諦めたらそこで試合終了だからな…!

…ところでここはナックルシティのどの辺なのだろうか?
今夜は実家に帰って弟のホップに開会式の日付を伝えてやりたいのにまた迷子だ…

リザードンに乗れば頭のいいコイツは家まで連れて行ってくれるだろうが…
最近、バトルばかりの日々が続いているので流石に休ませてやりたい

そんなことを思いながらナックルシティをぐるぐるしていたらサラサラとした長い黒髪の女性がガラの悪そうな男2人に絡まれているのが目に入った

あれは…サクラか…?
絶対にそうだ、俺が見間違えるわけがない!

男の1人がサクラの肩に手を置いたときにサクラは嫌そうに顔をしかめた

その瞬間、俺の頭に血がのぼる

急いで駆け寄ってサクラの手を引っ張って俺の体へと引き寄せた
突然のことに振り向いたサクラは驚いた表情を浮かべていたが、俺の目線は男2人から離さない

待ち合わせしていたんだと匂わせながら何か用があるのかと男2人に尋ねればビクッと肩を震わせて逃げて行く…

サクラが俺にお礼を言ってくれたが可愛い顔をしているのだから正直もう少し気をつけて欲しかった
…思わず口に出してしまっていたので隠すように一昨日の夜の事をサクラに謝り、話を変える

そしてどーしてナックルシティに居るのかと聞かれたので素直に迷子になったと伝えると苦笑いをされてしまった…

…俺からしたら迷わず目的地に着けるなんてすごい事なんだが…汗

まぁいいか…お礼として道案内をしてくれるというので好意に甘えることしよう
…道が本当に分からなくて困ってたから正直助かった

…もしかしたらナックルシティで野宿する羽目になっていたかもしれない…


「ところでどちらに行かれるんですか?」


隣を歩くサクラが俺を見上げる
俺の位置からだと上目遣いに見えてしまってその可愛らしい顔にドキッとしてしまう


「あ、あぁ…ナックルシティ駅に行きたいんだ
電車に乗ってブラッシータウン駅まで行かないと実家に帰れないからな」


「駅ならキバナさんの家の近くですよ!
丁度いいですね〜」


「え!そーだったのか?!」


「あれ?キバナさんの家に来たことないんですか?…あんなに仲良いのに…」


「いや、何度も行ってるが…駅から行くと迷うんだぜ…」


迷うと言えばまた苦笑いされてしまうだろうと思ったが彼女はクスクスと小さく笑っていた


「得意不得意は誰にでもありますもんね!
そのうち迷わないで行けるようにきっとなりますよ!」


明るい声でそう言って貰えると次は迷わず行けるような気が不思議としてくる

2人でこーやって歩いていると回りの目からはカップルに見えるのだろうか、町の人々は俺たちを見て声をあげている

1人で歩いているときは声を掛けられることが多くてたまに疲れてしまうが、サクラが隣に居ると声をかける人は流石に居なかった

…そんな姿を見ていた街の一部の人間が写真を撮ってSNSに投稿していたなんて俺はこの時、知る由もなかった…


しばらく他愛のない話をしながら歩けば駅まで思ったよりすぐに着いた
サクラがキバナの家をスーッと指差して教えてくれたが…

嘘だろ…ホントに近かったんだな…
…毎回逆方向へ歩いて行ってしまっていた…


「駅まで案内してくれて助かったぜ!
…まさかキバナの家がこんなに近いとは思わなかったが…
とにかく、これで実家に帰れるよ」


「いいえ、このくらいお安い御用です!
…ブラッシータウン駅から迷ったりしませんよね?」


「大丈夫だぜ!弟のホップがいつも迎えに来てくれるからな!
…それより今度から夜道を歩くときはポケモンをボールから出して連れて歩いたほうがいいぜ
…良い人間ばかりとは限らないからな…」


「分かりました!今度からはポケモン連れて歩きますね」


「あぁ、約束してくれ」


そんな約束をしていたら丁度、電車が来たので俺は乗り込む
俺の姿が見えなくなるまで笑顔で手を振ってくれるサクラに心がじんわりと暖かくなった…
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