ポケモン(長編)キバナ
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「こ…コラ!君、危ないから待ちなさいっ!」
「もう大丈夫ですからーっ!!
全然痛くないですからーっ!!!」
待合室で待っていると廊下が騒がしい…
…こんな時に何だって言うんだよ…!とイライラしたが声をよく聞けば聞き慣れた声色
ジムトレーナーも涙が止まり不思議そうに廊下に目をやっている
その時、目の前でバタバタと病院の廊下をサクラがおぼつかない足取りで走り去って行く…!
…その後ろを懸命に追いかける少しぽっちゃり気味の医者
「…はぁあああっ?!」
一瞬、呆気にとられる俺様とジムトレーナー
…今、見た状況に盛大に声が出ちまった…!
俺様の身体能力の高さをなめんなよ!
すぐさま後を追ってサクラをとっ捕まえる
…額はパックリ割れてしまっていて、血が止まっておらずポタポタと垂れていた…
「ぎゃーー!注射いやぁああ!!」
俺様が捕まえたんだが、医者に捕まったと勘違いしているサクラは怯えながら逃げようと暴れている
は?……注射が嫌だと…?!
俺の眉がピクッと動く
…後ろでその様子を見ていたトレーナーの顔が瞬時に青ざめた…
「こんっの…馬鹿野郎っ!!
注射ぐらい我慢しろっっ!!」
俺様の咆哮ような怒鳴り声が病院内に響き渡り、サクラの動きが止まった
…そしてふらっと地面に倒れ込んでいく
倒れ切る前に体を支えたが意識が朦朧としているようだった
…さっきも意識ぶっ飛ばしてた上にそんだけ頭から血を流したら貧血を起こすに決まっている
おまけに全力で走れば余計に危ないだろうが!
そして今度は貧血によりサクラはまた意識を失う
サクラを横抱きにして医者についていき、病院のベッドに寝かせればまた逃げ出されては困る!とでも言うかのように手早く麻酔を打ってチクチクと傷口を縫っていく医者…
一通り治療が終わり、医者と一緒に廊下を出ればサクラが先程逃げ出したときに落ちた血を看護師が掃除していた…
「お騒がせして申し訳ありません…」
深く頭を下げて医者に謝る俺様
自分のジムの人間…ましてや恋人が迷惑掛けちまったんだから謝らないわけにはいかない
「…あれだけ血を流してるのに意識が戻ったのでビックリしましたよ
…しかも注射器見て逃げ出しますし…
通常なら血が足りなくて意識戻りません…
…ましてや走れるような状態じゃないのに…かなり危ないですよ、全く…」
ちくちくと嫌味を言われたが、ごもっともな医者の言葉に何も言えなかった
…つーかそんな危ない状態だっつーのに注射の方が怖いのかよ…汗
ブツブツと文句を言いながら戻っていく医者を見ながら俺は盛大な溜息が出た
散々心配させやがって…
なんであんなに頭に強打受けといてこんだけ暴れられるんだよ…
…相当な石頭だな…ったく…
俺様と同じように看護師に頭を下げて謝っているジムトレーナー
俺の姿を見つけると駆け寄ってきた
「あー…あとは俺様が面倒みるわ
悪かったな、頭下げさせちまって」
そういうと苦笑いを浮かべていたが、コイツもサクラが心配だったようでどこかホッとしたような様子だった
ジムも放置してしまっているので、ジムのことを任せるとジムトレーナーは病院を後にする
俺はサクラの居る病室へ戻ればベッド近くの椅子に座り、眠っているサクラの頭を優しく撫でた
…貧血のせいで顔色は青白いが、傷はもう大丈夫そうだな…
「…無事で良かった」
バトルフィールドの扉を開けてサクラが倒れている姿を見たときは心臓が潰れたんじゃねぇかってくらい痛かった
…お前が居なくなったら俺様、抜け殻みたいになっちまいそうだ…
眠るサクラの片手に自分の手を絡ませれば俺の手よりずっと小さくて…
…守ってやらねばという使命感に駆られる
隣に居てやりたかったがそろそろ病院の面会時間が終わりに近い
そろそろ出ないとまずいよな…って思っていたらサクラの目が開いた
「サクラ!…気分はどうだ?
ジムの皆も心配してたんだぜ?」
サクラの目が開いて俺様はホッと安堵して声をかけたが…
「…キバナさん…ご迷惑をお掛けしてすみませ…うっ!
…き…気持ち悪い…吐きそう…」
サクラは青白い顔で口元を押さえている
貧血が相当キツいのか、辛そうだ…
「すぐ先生呼んで来るから待ってろ!」
慌てて病室を出て近くの看護師に声をかけた
…しばらくしてさっきとは別の医者が病室に入ってくる
「傷は縫ったので問題ありませんが…
貧血がだいぶ酷いみたいですね
…点滴してたはずなのにもしかして取りましたか?」
ギクッとサクラの肩が動く
…確かにさっきまでサクラの腕には点滴の針が刺さっていたはずなのに針は抜かれてぶら下がっていた
…俺様が看護師を呼びに行ってる間に抜きやがったな…!?
「…お〜ま〜え〜な〜っ!」
俺様の目が釣り上がり、眉がピクピクと震える
仁王立ちしてサクラを見下ろせば俺様が怒っている事を察して青白い顔をさらに青くしていた