ポケモン(長編)キバナ

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ジムチャレンジが始まってしばらく経った頃…

仕事が落ち着いてきた俺はキバナとトレーニングでもしようと思ってリドーザンの背中に乗せて貰い、ナックルシティに向かっていた

…サクラにも会えるかもしれないしな!

一昨日は彼女の誕生日だったし、一応プレゼントも用意したんだが…
…俺がサクラにプレゼントを渡せばキバナは怒るかもしれないな…

ナックルスタジアム前に着けばリザードンが遠くから走ってくる人影を見つめている…

俺も目を凝らしてそちらに視線を向けた


「ダンデさーん!」


…サクラだ!
笑顔で駆け寄りながら俺の名前を呼ぶその姿に心臓は高鳴った


「久しぶりだな!ジムチャレンジは順調か?」


「はい!
ダンデさんから頂いたヒバニー…ラビフットに進化して大活躍ですよ!
ダンデさんのおかげです!」


そう言ってニコッと微笑むサクラの顔
…相変わらず、可愛いな


「それは良かった!
そうだ、これ…誕生日プレゼントだ」


ポケットから用意した誕生日プレゼントを出したが、リザードンに乗っていたからか少しクシャッとしてしまっていた


「わー!ありがとうございます!
開けてもいいですか?」


そんな事など気にせずに喜ぶサクラが開けていいかと聞いてくるので、もちろんOKした


「腕時計!?
ラビフットと同じ赤色だー!かわいいっ!」


中身を確認すれば、キラキラと眩しい笑顔で嬉しそうにして早速、腕時計を着けるサクラ


「あまり、スマホロトムの電源を入れてないようだったからな!
これならすぐに時間が確認できると思ったんだ」


「助かります!…スマホロトムは旅してると充電が勿体無くって…
ところで…ダンデさんはキバナさんに用事ですか?」


サクラは俺がナックルスタジアムの前に居たからすぐにキバナ関連だと察したようだ…


「あぁ、久しぶりに一緒にトレーニングでもしようかと思ってな!」


「私もまた旅に出るので一目会いたくって…
朝起きたら家に居なかったんですよ、だからジムにいるかなーって思って来ちゃいました!」


…そう答えたサクラの頬は少し赤かった
キバナの事が本当に好きなんだろう…
…俺の胸がズキっと痛む


「…一緒に行くか
キバナは今頃トレーニングルームに居ると思うぜ」


平常心を保ちながら笑顔を向けた
…ファンの対応に慣れてるから俺は作り笑いが上手いんだ…

サクラと2人でトレーニングルームに入ればすぐにキバナが気が付き、こちらに向かってきた
サクラが嬉しそうな顔をして言葉を発しようとしたが、キバナの方が早かった


「よーダンデっ!ん…?アンタは…
なんだなんだ?ついにダンデにも彼女が出来たのかよっ!?
しかもめちゃくちゃ美人じゃねぇか!」


「は…?」


…キバナ…?…なにを言っているんだ…?

放心している俺の肩をバシバシと叩き、楽しそうな様子のキバナ

サクラは…驚いた顔をしたまま固まっていた
…ふるふると身体を震わせながらようやく声を絞り出す…


「き…キバナさん!もう…何の冗談ですかー?」


ピクピクと口元を震わせながら明るい声を出して笑顔を向けるサクラだが、その笑顔はどこか固く、俺には苦しそうに見えた


「ん…?…冗談?何がだ?
…俺様、アンタと会った事あったっけ?」


サクラから名前を呼ばれれば不思議そうな顔をして問い掛けるキバナ

…悪ふざけにしては度が過ぎているだろうっ!

キバナの言葉を聞いたサクラの目には涙が溜まっている…!
その姿に俺は声を荒げた


「キバナっ!悪ふざけも大概にしろよ…!
自分が何を言っているか、分かってるのか?!」


俺の怒鳴り声を聞いてビクッと驚くキバナ
…滅多に怒る事のない俺の様子に戸惑っているようだった…


「おいおい…
ダンデまでどーしたんだよ…?
…アンタも落ち着けって…」


サクラの目に涙が溜まっている様子にも気付いたらしい
…あたふたと焦った様子で俺とサクラをなだめようとしている…

おかしい…
…キバナはサクラの事を本当に大事に思っていたはずだ…
一体、どうしたんだ…!?


「キバナ…サクラの事が…
…本当に分からないのか…?」


「…?…今、初めて会ったんだぜ?
ダンデこそ、何言ってんだよ…?
お前…今日おかしいぜ?」


「…嘘…」


…悪ふざけじゃなさそうだ…

サクラの顔は心底絶望しているようだった…
…そして溜まった涙が溢れてポロポロと溢れた

そのままトレーニングルームから逃げるようにサクラは飛び出していく…!


「サクラっ!!」


飛び出していくサクラを反射的に追い掛ける
…後ろからキバナが何か言っているようだが今は耳に入らなかった…
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