ポケモン(長編)キバナ

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4個目のジムバッチを手に入れてホッとしながらラテラルスタジアムを出たのに…
まさかキバナさんに会うとは思わなかった…!

私の事をジロジロ見てきたかと思えば急に担がれるし、病院に連れてかれるし…
最後には…ホテル?!

…もう訳が分からない…!

確かにワイルドエリアでしばらくサバイバル状態になってたからあちこちに怪我はしたけど…
私は今、怪我なんかより早くジムバッチを集めてキバナさんに勝ちたいのに…!

体調なんて…悪くない…はず
てゆーか、体調なんてどうだっていい…


「…お前、今、体調悪くねーとか思ってんじゃねーだろうな?」


キバナさんが私を見下ろしながら不機嫌そうに口を開いた
…思っている事を言い当てられた私はギクッと肩が揺れる…


「…気ぃ張り過ぎなんだよ、少しは休め」


そう言って部屋を出て行くキバナさん

…急に現れたかと思えば…
私の心配をしてくれたの…?

…記憶、ないはずなのに…

…キバナさんに担がれた時に久しぶりに彼に触れて思わず泣いちゃった私…

今でもこんなにキバナさんが好きなんだって再自覚しちゃったな…
…うん、もっと頑張って早く記憶を取り戻してあげなきゃ…!


「…熱、本当にあるのかな?…傷は痛いけど…
あ、せっかくホテルに居るんだからゆっくりお風呂に入りたい!」


サイトウさんとのバトルで汗ばんだ体をスッキリさせたかった私はお風呂に入った

…それが良くなかった…!

ジムバトルやワイルドエリアでの特訓で四六時中、気を張りまくっていた私の体はキバナさんの言う通り、本当に発熱していたのだ…!

早くバッチをゲットしなくては…!って焦っていて自分の体のことなんて気にしてなかった…
…発熱してる状態でお風呂なんか入ったら悪化するに決まっている…

うぅ…久しぶりにゆっくりお風呂に入れたから長風呂しちゃったし…
…なんか…ふらふらする…汗

ルームウェアを手にとって着ようとしたけどそれすらも怠い…
下着と上だけ不恰好に着て私はそのままベッドに倒れ込んだ

あ〜…無理し過ぎてたかも…
でも…自覚が出来なくなるくらい、私、頑張ったんだ…
…私の身体中に出来た無数の生々しい傷がなんだが誇らしかった…

そんな事を考えていたら、ガチャ…っと扉が開く音が聞こえてくる

え…?
…誰?…もしかして…!

ベッドに横になっている私に近付いて来たのはやっぱりキバナさんだった
…そしてぐったり気味な私を見てピクピクと眉を動かしている…

あ…怒られる…

そのキバナさんの仕草に見覚えのある私はぎゅっと目を閉じたんだけど…
…聞こえて来たのはキバナさんの溜息だった


「はぁ…熱があるって言っただろーが…
…なんで風呂入ってんだよ…」


「す、すいません…自覚がなかったもので…」


怒られると思っていたが、キバナさんは怒るよりも呆れてしまったみたい…

てゆーか…帰ったんじゃなかったんだ…


「お前、いつもこんな無茶してんのか?
…俺様がちょっと出た隙になんで悪化させるようなことすんだよ、全く…」


そう言ってキバナさんはテーブルの上に袋を置いた
なんか美味しそうな匂いがする…


「…スープを買って来たんだが…
…飲めそうか?」


「えっ…!?
…あ、ありがとうございます…」


コクンと頷いて返事をする
…私の為にキバナさんがスープを買ってきてくれた事に正直、驚いた…

ベッドから出ようとした私だけど、キバナさんの手が伸びてきてストップをかけられる


「そのままでいい」


そう言って食べさせようとしてきたから更にびっくりした…!


「自分で食べれますからっ…!」


そう言ってスープを受け取ってゆっくりと飲み込む
…温かいスープがじんわりと体に入ってきて安心したような気分になる…

…でもさっきからキバナさんが私を見つめてくるから落ち着かない…
一体、どうしたっていうんだろう?
…キバナさんは今、私の事を忘れてしまっているはずなのに…

チラッとキバナさんの顔を見れば…
…やっぱり落ち着かないのかソワソワしている


「あのよ…悪かった」


「…えっ…?!」


突然の謝罪の言葉に私は目を丸くする
…持っていたスープを手から落としそうになるくらい驚いた


「俺様のジュラルドンがずっと元気ねぇんだ…
…大事な恋人と引き離されたからな…
その姿がお前と重なっちまって…
…記憶はねぇけど俺ら付き合ってたんだろ?
だから…酷い事を言って悪かった…」


再度、謝るキバナさんに困惑する
けど…正直、すっかり嫌われたもんだと思っていたから少し安心してしまう


「い、いえ…私も強引でしたし…
それに…今は病院まで連れて行ってくれて…
…ありがとうございました…」


私がお礼を言えばホッとしたような顔を浮かべるキバナさん

しかし…これ以上、お互い何を話せばいいか分からず、気まずい雰囲気が流れる…

私は迷ったけど…どうしてもキバナさんに聞きたい事があった
…意を決してキバナさんの顔を見つめる


「…あの…!
…記憶は…やっぱり戻したくないですか…?」


…キバナさんは一瞬、驚いた顔をしたけど…
…黙ったまま何も言ってこない
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