ポケモン(長編)キバナ

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サクラと別れてそのままキバナの家まで行こうとしたんだが…

サクラのゲンガーもリザードンの背中に乗って飛んできたから流石に重かったようだ…
…ナックルシティの入口辺りで下降していき、俺とゲンガーに降りるようにと目で訴えられてしまう


「あぁ、ここまでありがとな!リザードン!」


疲れた顔のリザードンに申し訳ないと思いつつお礼を伝えてボールに戻す

そしてゲンガーと共にキバナの家まで歩いて向かったんだが…一向に辿り着けない…
…まず、駅はどっちにあるんだ…?汗

一応、頑張ってみたんだが…何度もリザードンに降ろして貰った地点に来てしまう
…自力で辿り着くのは無理だな…

そう判断してスマホロトムを取り出し、キバナに電話をかける

しばらくしてやってきたキバナは迷子の俺に呆れたような顔を見せるが、それとは別に少し緊張しているようにも見えた
…記憶を取り戻すなんて殆ど…いやそんな経験をするのはキバナだけかもしれない

…サクラに対する俺自身の気持ちが無くなったわけではない…
むしろ彼女の儚げな姿に想いは日に日に増してくばかりだ…

…俺がサクラを隣でずっと守ってあげれるならどんなに幸せだろう…

しかし…キバナが記憶を戻せば俺は…
…サクラに己の想いも告げられず、兄のようにこれからも接していかなければいけないと分かっていた…

胸が苦しくなる夜だって何度もあったし、サクラがキバナではなく俺を選んでくれたらって…

…いや、こんな考えはやめよう…

…大事なライバルで親友のキバナとサクラへの想いを天秤にかけてしまいたくない
…2人が傷付いて悲しむ姿なんてもう見たくないんだ…


キバナの部屋に辿り着けば俺は早速ムンナをボールから出した
ムンナはふわふわとキバナの元へ飛んで覚悟を決めたようなキッとした強い目でキバナを見つめている…


「…なぁ夢を喰わせるってことは眠らなきゃいけねーよな…
…俺様、めちゃくちゃ目が冴えてんだけど…」


自分のベッドに腰掛けてそわそわと落ち着かない様子のキバナは手に持つ月の石を見つめながら話す
…確かに眠れるような心境じゃないだろうな…

するとサクラのゲンガーがニヤリと笑みを向けてキバナに容赦なくさいみんじゅつをかけた


「っ…!」


グラっとキバナが体を揺らしたかと思えばそのままベッドに倒れ込んで深い眠りに落とされる
…月の石はその拍子でキバナの手から落ちた


「…君は容赦ないな
…もしかしてこの為に着いて来たのか?」


このゲンガーは…頭が良いな
…空気も良く読める子みたいだし…

それにさっき駄々をこねるムンナを叱りつけていたのもそうだが…
…かなり容赦ないし、手際の良さも感じる…

しかもキバナにさいみんじゅつをかけてご満悦そうだ…汗
おっと…それよりムンナを進化させなければ…

俺は落ちた月の石を拾い上げてムンナにそっと近付ける…


「…ムンナ、頼むぜ」


ムンナに月の石が触れた途端、眩い光に包まれながら姿が変形していく…!
…無事にムシャーナに進化すればそのままふわふわとキバナの頭の上に飛んでいき、ムシャムシャと夢を食べ始めた…

…これで元どおりだ…
サクラもキバナも…幸せになるだろう…

俺は複雑な心境を胸の奥に隠しながら黙ってその様子を見つめ続けた…

しばらくしてムシャーナが夢を食べ終えたようで俺の元に飛んでくる
スッキリしたような清々しい顔を浮かべていたので優しく頭を撫でてやれば嬉しそうに鳴き声をあげた

…キバナは…まだ眠っている

起こしても大丈夫なのだろうか…と考えていればサクラのゲンガーがキバナに近寄り顔を覗き込んでいる
…ジーッと見つめてはニヤリと顔を緩めた


「お、おい…何をする気なんだ…?」


…サクラのゲンガーは容赦ない性格だ
俺は不安になって問い掛けたがさらにニヤニヤと顔を緩めるばかりで冷や汗が垂れてしまう…

俺の心配をよそにゲンガーはペシペシとキバナの頬を叩いて無理に起こそうとし始めた…!


「起こしても大丈夫なのか?!
記憶は…ちゃんと戻ったのか?!」


慌てる俺をゲンガーとムシャーナがニヤニヤしながら見てくる
…2体に小馬鹿にされてしまって少しイラッとしたが…きっと大丈夫ということなのだろう


「っ…」


ゲンガーがペシペシとキバナの頬を叩いていたものだからキバナはフラフラとしながらも目を覚ました
…夢を食べられた後だからなのか、頭を押さえて眉を寄せ、顔を歪めている…


「キバナ!大丈夫か!?」


俺はキバナの肩を掴んで意識を確認する
…俺と目が合えばキバナはようやく意識がはっきりしてきたようだ

そしてハッとした顔をしたかと思えば、勢い良く俺の腕をガシッと掴む…!


「サクラ…サクラは何処にいるんだ?!」


歪んだ顔で俺に叫ぶように問い掛けるキバナ…
…その勢いの凄さに俺は一瞬、怯んでしまう


「ワ…ワイルドエリアに…」


俺がそう言った途端、フライゴンをボールから出して部屋の窓から飛び去って行く…!

呆気にとられた俺だったが、慌ててゲンガーとムシャーナをボールに戻し、リザードンを出して追い掛けた

しかし…先程ゲンガーと俺を乗せて飛んだせいで疲れているのか、キバナのフライゴンが速過ぎるのか…

……見失った…汗
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