ポケモン(長編)キバナ
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「ザマゼンタ…!
さっさと俺様の女を返しやがれっ…!」
俺が怒号を飛ばせばビクッと震えるザマゼンタ
ザシアンもこんなに怒りを表す俺様を見るのは初めてなんだろう…
…口を開けたまま驚き、狼狽えている
しかし、怯えながらもザマゼンタはふるふると首を横に振って俺様の要求を拒否する態度を見せた
その様子に今度はザシアンがザマゼンタに向かって吠え出して負けじとザマゼンタもザシアンに吠え返す
その様子にプツンと俺の何かが切れる音がした
口を大きく開けて俺様が再度、怒号を飛ばそうとした瞬間、空から怒りの満ち溢れた咆哮が響き渡る
俺もザシアンもザマゼンタも恐ろしい咆哮が聞こえてきた上空を同時に見上げた
…そこには怒りに我を忘れているかのような形相をしたサクラのサザンドラ…!
今にもザマゼンタを攻撃しようとしている…!
ひんしに近い今のザマゼンタにあの馬鹿デカい技はまずいと判断したザシアンが咄嗟にザマゼンタの前に立って守るような動作を見せる
「サザンドラ!よせっ!!」
俺様の激しい声にハッとしたサザンドラは攻撃をやめて俺様の隣に降りてきた
…フーフーと荒い呼吸を繰り返しながら怒りをコントロールしつつも、いつまた切れ出すか分からない…
「おい…サクラを返さねーと俺様もサクラのポケモン達も黙ってらんねぇぞ…」
まるで自分の声じゃないのではないかと思うくらい低いドスのある声が出てきた
…ザマゼンタはとうとう観念したのか小さく鳴き声をあげてザシアンを見つめる
コクンと頷いたザシアンは俺様の前までゆっくりと歩いて背中に乗れとでも言うかのように姿勢を低くした
それに従ってザシアンの背中に乗れば颯爽と森を駆け出していく
ザマゼンタもサザンドラもその後を追う
「…ここは…俺様とサクラが初めて会って…
…そしてサクラが消えちまった場所じゃねぇか…」
ワイルドエリアの中でもこの場所は…
…俺様にとって特別な思い入れがある場所だ
もしかしたら…サクラの世界と繋がってる場所なのかもしれねーな…
辺りを見渡せばザマゼンタが霧を発生させ始める…そして辺りが深い霧で覆われればスーッとザシアンが姿を消した
ザマゼンタは俺様の横にいるがその表情は何やら思い詰めてるいるようだった…
…ザシアンがサクラをガラルに連れて来た理由もザマゼンタが返した理由も分からない…
だが今の俺様はサクラを取り戻す事だけしか頭になかった
…どれくらい時間が経ったのだろうか
辺りはすっかり暗くなっていて霧のせいか空気はひんやりとしている
そして急に霧が深くなったかと思えばザシアンがスーッと現れた
その背中には…俺様が会いたくて会いたくて堪らなかったサクラの姿があって俺は夢中で駆け出した
「サクラ…!サクラっ!」
ザシアンの背中で意識を失っているサクラをザシアンから受け取り、俺様の腕の中にぎゅっと閉じ込めた
やっと見つけた…本物の…俺様のサクラだ…!
「っ…散々心配させやがって…」
サクラを抱き締める俺様の腕は自分でも分かるくらい震えていた
目頭が熱い…!
…サクラの顔がぼんやりとしか見えねぇ…
サクラを抱き締めているとサザンドラが俺様のパーカーのフードを引っ張る
…目線をやれば逞しい背中を向けて乗れと言ってるようだった
「あぁ…帰ろうな…俺たちの家に」
そう言って微笑んでやれば嬉しそうに表情を明るくさせるサザンドラの背中に乗った
真夜中に俺様の家に辿り着けばサクラを俺様のベッドに寝かせた
…意識を失ってはいるが見たところ外傷はないようでホッとする
ザシアンとザマゼンタはサクラを挟んで見守っているかのようだった
…ザマゼンタが当たり前のように着いて来たことに多少驚いたが…汗
…この伝説のポケモン2体とサクラの関係も調べねーとな…
またサクラが連れてかれちまったら俺様、気が狂っちまうかもしれねー…
主人を守るポケモンって博士は言っていたが…一体何から守ろうとしているんだ…?
それにザシアンはサクラをこっちの世界に連れて来たっていうのにザマゼンタは返そうとしていた…全く逆の行動をする意味も分からねぇ…
疑問ばかりが浮かんでくる
机の上に置いてあるレプリカを手にとってパラパラとページをめくる
この書物さえ解読出来れば…
…答えに近付けるかもな…
まだ、俺様ですら全然読めねーけど…
パタンとレプリカを閉じて机の上に置く
考える事もやらなきゃいけない事も山積みだな…だが今は…
…ベッドに近付きゆっくり腰掛けてサクラを見つめれば気持ちが穏やかになっていくような感覚がする
「…もう2度と離さねーから覚悟しろよ…?」
…そう呟いて眠るサクラに俺は優しい口付けを落とした…