ポケモン(長編)キバナ

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スタジアムから鳴り止まない歓声と悲鳴を背に俺たちはナックルスタジアムの執務室へと移動した

…キバナの手によって運ばれているサクラの身体は痙攣してしまっていて表情も辛そうだ…!

俺もキバナも試合に夢中になっていたからサクラの様子に気付かなくて今頃、後悔が押し寄せてくる

キバナが執務室に置いてあるソファにサクラを寝かせれば俺はすぐサクラに駆け寄った


「サクラ、大丈夫か?!
…こんなに無理をしていたなんて…!
すぐに試合を中断するべきだった…!」


「ダンデさん…私は大丈夫ですよ…?
…色々とツケが回ってきただけだと思います…」


俺の心配する声に苦笑いを浮かべながら力無く返答するサクラ
…そんな姿を見ていると胸が苦しくて顔が歪んできてしまう…


「…ツケって…元々居た世界や過去に行ったり来たりした事か?
…タペストリーが原因だよな?」


何を言っているんだ、キバナ…?
…過去に行ったってどういう事なんだ…?

…サクラが別の世界から来た事は俺も前々から知っているが…


「はい…英雄2人にお会いしたんです…
…私の姿を見るなり、ものすっごくバトルの特訓をされましたよ…
おかげでバトルが強くなりましたが…」


ガラルの英雄2人に会って特訓されただと…!?
…サクラは本当に過去に行ったのか?!


「ちょっと待ってくれ!
…君は…失踪していた1ヶ月の間、3000年前のガラルに行っていたのか?!」


「…俺様も信じ難いが…
…サクラは元々別の世界からガラルに来てるし、ありえねぇ話でもねぇだろ…
…この有様だしな」


キバナはそう言って心配そうな表情をしながら弱っているサクラの頬に触れた…


「…ちょっと休めば大丈夫ですよ?
それに…英雄2人から頼まれた事があって…
…今すぐにでもやらなきゃいけないんです…!」


そう言って顔を歪めながら上体を無理に起こそうとするサクラを俺とキバナが必死に止める


「君は今、とても弱っているんだぞ?!
やらなければいけない事があるなら俺やキバナが代わりにやる!」


「ダンデの言う通りだ
…そんな状態じゃあムゲンダイナとも戦えねぇだろ…今は頼むから休んでくれ」


再び、ソファで横になるようにサクラの体を戻せば困ったような焦ったような顔をサクラは浮かべ始めた…


「…ザマゼンタの主人を急いで見つけないといけないんです…
私とザシアン…キバナさんとダンデさんが居ても恐らく勝てません…
…ザマゼンタが主人に認めてくれるポケモントレーナーを探さないと…!」


「ザマゼンタの主人…?
…英雄の子孫じゃないとダメだとあの古い書物には書いてあったんだろう?」


前にレプリカを解読した際、ザシアンとザマゼンタの主人は英雄の子孫でなければならないと書いてあったはずだ…
…この広いガラルにサクラ以外の英雄の末裔が居るのか…?


「いえ…血族である私が既にザシアンに選ばれていますので…
ザマゼンタに血族はもう必要ないかと思います
…ザマゼンタの場合は恐らく…」


「「恐らく…?」」


サクラが冷や汗気味に俺達から視線を逸らす
…そしてしばらく言いにくそうに黙っていたがようやく口を開いた


「…ザマゼンタの好みの問題だと思います…」


「………は?」


…長い沈黙の中、最初に反応したのはキバナ
拍子抜けしたような表情を浮かべていて開いた口が塞がっていない…汗


「つ、つまり!ザマゼンタが気にいるポケモントレーナーを探せばいいんだな?!」


俺も正直、こんな一大事の中でザマゼンタの好みの問題を出されるとは思わなかったが…
…ザマゼンタは伝説のポケモンだし、結構こだわりがあるのかもしれないな…


「…トレーナーの検討は大体、ついているんですけどね…
それにザシアンとザマゼンタの持ち物も探しに行…「キバナ様!次のチャレンジャーが来ましたっ!」


サクラの弱々しい声を掻き消す程の声量で執務室に入ってきたのはキバナのジムのジムトレーナーだった


「!!
…俺様の所までこんなに早く来るトレーナーがまだ居たのか?」


話の途中だったが、キバナは平然を装ってジムトレーナーに言葉を返す
…サクラ以外に順調に勝ち進んでるトレーナーとなると…まさか…!!


「君!そのトレーナーというのは…!」


「チャンピオンの弟…ホップ選手です…!」


ホップの名前を聞いてつい口元が緩んだ

流石、俺の弟だ!
こんなにも早くキバナの所まで来るなんて…!

俺がホップの素晴らしい成長に喜びを感じて、噛み締めている時だった


「ホップくんっ!!?
ホップくんが来ているの?!」


…ホップの名前を聞いた途端、サクラが勢い良くソファから起き上がって…
待ってました!…と言わんばかりに目を輝かせながらジムトレーナーに向かって声を出した…
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