ポケモン(長編)キバナ

□19
1ページ/7ページ


ムゲンダイナを捕獲して…
…ブラックナイトを無事に止める事が出来た…

ガラルの平和は守られたし、俺様のナックルシティだってスタジアムの屋上が壊滅に近い状態になった程度だ…

…普通に考えれば、これだけで済んで良かったんだろうけどよ…

俺様…ちっとも嬉しくねぇんだ…
今は…とにかく悲しくて悔しくて…
…体がぐちゃぐちゃに潰れちまいそうだ…

捕獲したムゲンダイナのモンスターボールを取りに行く事すら出来ない…
近寄りたくもねぇ…あのボールを深い海の底に沈めてやりたいくらいだ…!

俺様の愛しい女も…長年お互い競い合ってきたライバルも…
…全てなくしてしまった…

…俺の生涯の宝物だっていうのに…!


「ううっ…クソッ…何でこんな事に…!!」


顔を歪めてバンダナを引っ張り、涙を隠す
…どうする事も出来ない状況にただ立ち尽くすばかりで時間だけが過ぎていく…

ホップも同様だった

冷たい地面に膝を付けたまま、大声をあげて泣き喚いている
…自分の兄貴が…ダンデが居なくなったんだ…

こんな子供まで俺様と同じ想いをしていると思うと更に胸が苦しくなって呼吸の仕方が分からなくなりそうだった…

共に戦い、傷付いているポケモンたちも大粒の涙を流していて…

あぁ…これホントに現実かよ…?
夢であってくれよ…頼むから…!
俺様からサクラを…ダンデを奪わないでくれ!

…この切実な願いが届く事は無いのだと…
…頭の中では理解している筈なのに心がそれを認められなかった…


「…どうして泣いているの?」


…突然、ユニフォームのズボンが引っ張られる感覚と幼い子供の声が聞こえて、振り返り視線を下に向ける


「………!!」


その声の主を見て俺様の涙は止まった
…いや、止まったっていうよりも…驚きで涙の出し方が分からなくなっちまった感じだ…!


「…ダ…ダンデ…か…?」


俺様のユニフォームのズボンを引っ張っていたのは、アーマーガア色の髪に黄金の瞳と豊かなまつげを持つ美少女…
…じゃない、良く見れば男の子だ…

…ダンデが着ていたチャンピオンユニフォームを引きずってるって事は…

マジかよ…!!
…ダンデだろ…これ絶対にダンデだ…!
なんで子供になってんだ?!
…5.6歳くらいに見えるが…ってそうじゃねぇ!

頭の中の思考がぐるぐるとまるで逆回転でもしているかのようだ…!

…ダンデはテンパる俺様を大きな瞳でじーっと見つめていたが、名前を呼ばれるとパァーッと明るい笑顔を向けてくる


「俺の名前、知ってるんだ!!
ところで…お兄さん、ここはどこだ?
俺…迷い子みたいなんだ…」


いや、今は迷い子って訳じゃねぇと思うが…汗
ん?…ちょっと待てよ…
…ダンデが小さくなってるって事は…!


「なぁ!?女の子居なかったか?!
お前より小さい女の子…!!」


ガシッと子供の姿をしているダンデの肩を掴めば、ビクッと震えるダンデ

やべ…こんくらいの子供からしたら俺はデカいだろうし、怯えさせちまったか…?


「女の子…?
…あそこの赤いマントにくるまって俺と一緒に寝ていた子の事…?」


ダンデの指差す方向にはダンデのチャンピオンマント…
そして無我夢中で俺はマントに向かって走り出して恐る恐るマントを引っ張った…


「…っ…サクラ…!」


マントの中に居たのはスヤスヤと眠る3.4歳くらいの幼い子供…
…ぶかぶかになってしまっているサクラの服を着ていて…幼い寝顔にはサクラの面影があった

サクラもダンデも消えて居なかった…!
なんで小さくなっちまってるのかは分からねぇけど…とにかく無事だ…!


「良かった…本当に良かった…っ!!」


幼くなったサクラをマントごと抱えて抱き締めれば、俺様の垂れた瞳から今度は安心からきた涙が溢れた


「あ…兄貴ーーーっ!!?
な、なな、なんで小さくなってるんだ?!
え!?本当に?!兄貴…だよなっ?!」


「??
俺に弟は居ないぜ!」


「ホップだぞ!?分からないのか?!
兄貴の1番のファンで弟だぞ!!?」


眠るサクラを抱き締めていると仰天しまくっているホップの声が聞こえてきた

…小さくなってもダンデはダンデだな…
マイペースに返事してやがる…汗

つーか…大男である俺様に声を掛けてくるし…
こんな瓦礫だられの場所に居るって言うのに…怖くないのか?

…子供になっても肝が据わってる所は変わってねぇな…汗


「ふぁ〜………っ!?」


ホップの騒がしい声に俺様の腕の中で寝ていた幼い姿のサクラが目を覚ました
…眠そうな目を小さな手で擦り、小さな口を目一杯広げて欠伸をする…

くっ…小さくなっても可愛い…
てゆーか天使か?!
普段は猫目気味の目が、幼くなって少し丸くなってて…とにかく愛らしいぜ…!

そんな可愛らしい姿のサクラを見つめていたんだが…俺様の顔を見てビクッとしたかと思えば、自分が今、俺の腕の中にいる事に気付く…

そして…


「うわぁぁぁあああん!!」


…泣かれた…泣
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ