ポケモン(長編)ダンデ

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「んー!懐かしのガラル地方!
…相変わらず、トレーナーが多いわね…」


バウタウンの港からフェリーを降りてぐいーっと背を伸ばす
…懐かしきガラル地方の空気に心身共にホッとしたような安心感が私の体を包んだ

辺りを見渡せば、夕方だというのに活気付いた港でたくさんのポケモントレーナーがショッピングをしたり、バウスタジアムへと足を運んでいた


…私がこのガラルの土地を離れてからもう10年以上も経っている…

この10年間で私の夢は叶った…ガラルでは実現出来なかったトップコーディネーターの道…

愛するポケモンたちを如何に美しく、気高く、ポケモンの本能を見せつけて魅了していくか…
…そればかりを考えていた

体の奥からゾクゾクと震えるようなあのコンテストでの熱狂や興奮…
…刺激的で美しくて…私の人生全てをバラ色に変えてしまうくらい熱中出来るものだった…

ま、昔の話だけどね!
今はこのガラル地方でやりたい事があるのよ!
…本当はもうちょっとコンテストに出場していたかったけど…


「んー…10年も時間が経てばそりゃ、ガラルも変わっちゃってるわね…
…ナックルシティってどうやって行くのよ…」


あちこちの他地方を転々と旅していた私の連絡手段と言えば、ノートPCだけだ
…地方によって様々な電子機器があり過ぎて…
面倒になってしまった私が唯一の連絡手段用に一応、持っているだけの物だけど…

でも、今は電源が切れちゃってて、ただの重い機械でしかない…

とりあえず、人に道を尋ねながらバウタウン駅に辿り着いた私は電車に乗り込んだ

わ〜…ワイルドエリア懐かしい…
あの赤い光は…ダイマックスポケモンね…小さい頃に大きなポケモンが怖くて泣いたっけ…

…いつもキバナが泣き虫な私の手を引きながらずっと守ってくれてたのよね…

電車の窓から見える自然豊かな土地…
…ワイルドエリアの光景が懐かしくて思わず、幼少の頃を思い出してしまう

幼い時にテレビで見た、ポケモンコンテストをきっかけにポケモンコーディネーターに憧れてしまった私は…
…家族の反対を無理矢理、押し切って家を飛び出してしまっていた…

だってガラル地方には、ポケモンコンテストがないんだもの!
女の子は夢を追うべきよ!

ポケモンコーディネーターとしてトップに立っていけたのは、長い旅の中で出逢ったこの子達のおかげだ…
…綺麗に磨き上げられたモンスターボールの中にいる愛しい私のパートナー達…

辛い時も楽しい時もぜーんぶ!
私と苦楽を共にしてくれた大切な大切な仲間…


「ん…?
ヤバっ!降り損ねた…?!」


どうやら私は懐かしきガラルに戻ってきて随分、思いふけっていたらしい…
…電車の扉が閉まると同時に離れてく懐かしきナックルシティ駅…

あぁ…私、ナックルシティ以外の街はあんまり分からないのにー!泣

後悔しても時すでに遅しだ…みるみる遠ざかるナックルシティを見ながら次に辿り着いた駅…
…シュートシティ駅でがっくりと肩をオーバーに落としながらも電車を降りた

しかも…バウタウン駅のからシュートシティ駅まで長距離を移動してきた為、辺りは既に夜へと変わっていた…

…おまけに終電もない

どーすんのよ!?
…こんな時間からじゃホテルも取れない…!
PCも電源ないし…荷物になると思ってキャンプ道具なんか持ってこなかった…!

せっかくガラルに戻ってきたっていうのに…
初日からなんたる失態…泣


「…君、どうかしたのか?」


落ち込む私の背後から男性の声が聞こえて振り返る

…そこには紫の長い髪にキラキラと輝く黄金色の瞳…赤い少々派手なオーナー服?かしら…

顔はイケメンだけど…顎髭がちょっと独特ね…


「…ちょっと…電車乗り間違えちゃったのよ…
…ガラルは久々過ぎてよく分からないし…」


溜息混じりに言葉を発すれば、ジーッと見つめてくる顎髭の男性…

…なによ?…私の顔に何かついてる?

…ガラルはポケモンコンテストが有名じゃないから私の顔を知ってる人なんてそんなに居ないはずなのに…

てゆーか…ここまで見られると流石に顔に穴が空きそう…汗


「…何よ?私の顔、なんか変?」


困っていた私を気にして声を掛けてくれたんだろうけど…流石に初対面なのに女性の顔を凝視するなんて失礼じゃない?

…少しだけムスっとした表情で私は、つい口を尖らせてしまう


「す、すまない…!
…君が俺の親友に似ていたものだからつい…」


「ふーん?まぁいいわ!
…お兄さん、この私に声掛けたんだから朝まで付き合ってくれる?」


電車も泊まる場所もないとなれば、朝まで飲んでやろうとヤケクソになった私
声を掛けてくれたお兄さんもイケメンだし…

…ナンパしてきたのはそっちだし、ちゃーんと付き合ってもらわないとね!笑


「あ、朝まで?!
な…何を言ってるんだ?!」


私の言葉に耳まで真っ赤にするお兄さん…
…案外、ウブなのかしら…


「お酒よ!お・さ・け!
バーなら朝までやってるでしょ?
ガラル地方のお酒なんて飲んだことないし!
…1人で呑むのもつまらないし、せっかくだから付き合ってちょうだい」


あたふたとするお兄さんの腕をガシッと掴み、近くでライトが点灯しているバーへと私たちは足を踏み入れた
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