ポケモン(長編)ダンデ
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「リザードン?終わったわよ?」
俺の目の前でリザードンがみるみると綺麗になっていく…
体はツヤツヤとしているし、バトルの時とは違うフニャ〜とした顔で随分と気持ち良さそうだ
…今はハナの膝の上に頭を乗せて夢見心地のようでウトウトしている…
まさしく彼女の腕前はプロだ…
俺も自分のパートナー達や幼い頃は実家の近くに居る、たくさんウールー達の世話を散々してきたが…レベルが違う
「ありがとう、ハナ
…俺ではここまでリザードンを喜ばせることは出来ない…
良かったな、リザードン!」
よしよしと軽くリザードンの頭を撫でてやれば「ばぎゅぁ〜」とリラックスした鳴き声をあげる俺のリザードン
…それでもハナの膝から離れる気配は無く、凄く懐いてしまったようだ
「ううん、お礼を言うのは私の方よ
温泉に連れて行って貰ったし、久々にとっても楽しかったわ!
ありがと、ダンデくん!」
俺のリザードンの背を撫でながら、まるで華のように美しい笑顔を見せてくれるハナ…
…正直、彼女の膝の上で甘える俺のリザードンが羨ましかった
「…ミミロップ?」
彼女の声と同時に俺の上着が引っ張られる感覚がした
後ろを振り向けば、ウサギのような容姿のミミロップがブラシを片手に俺を見つめていた
「ブラシ?
…俺はハナみたいに綺麗には出来ないぞ…」
ブラシをミミロップから受け取ったはいいが…
…ハナの腕前と比べれば、いくら元チャンピオンの俺といえど話にならない…
オロオロと困っているとミミロップが頬を膨らませて、チラチラと俺のリザードンを見ていた
…なるほど、俺のリザードンがハナを独占してるから仕方なく俺に頼んでいるのか…
「…!
…君はとてもふわふわしているな!」
断ってしまうのも可哀想だと思って、優しくミミロップに触れてブラッシングをしてみたが、綿菓子のようにふわふわとした毛並みに頬が緩んだ
とても良い触り心地だ…
…まるで高級な羽毛布団のような…
「…こーやってしてあげた方がいいわ」
ブラシを持っている俺の手の上から重ねるように触れたハナの華奢な手…
背中からハナの匂いと柔らかい感触がする…
ってダメだろう!?
…俺とハナは友人なんだ…!
「こ…こうか?」
平然を装いながらハナの指示通りにブラッシングを行う
…背中に触れる柔らかい感触に体が熱くなりそうだったが必死に耐えた
「ばぎゅあ!」
そんな中、ハナが此方に来た際に膝から引き離されてしまった俺のリザードンが拗ねたような鳴き声をあげ、ハナ目掛けてのし掛かってきてしまう…!
「え?!きゃっ…!!」
とっさにミミロップは俺たちから距離を取ったが、俺の背中にはハナとリザードンの体重がズシっとのし掛かっていて…
…下敷きになっている状態だ…!
そんな事をすれば…ハナの胸の感触を先ほどよりも鮮明に感じてしまって…
「リザードン!お、降りるんだ!
ハナが潰れてしまう…!」
普段は人にのし掛かるなんてしないのに…!
…自分の相棒であるリザードンの甘えっぷりに驚きつつもこのままではハナが潰れる…!
それに俺もこのままでは非常にまずいっ!
慌てて声を荒げれば、ハッとしたリザードンが離れてゆく…
すぐさま起き上がって振り返り、ハナの安否を確認しようとしたが…
…元々近距離だった俺たちの顔と顔は更に近い位置にあった…
「……す、すまない!俺のリザードンが…!
重かっただろう、怪我はないか?」
目の前にハナの綺麗な顔があって一瞬、言葉を失った…
…だがそれよりも今はハナの身体の方が心配だった俺は、彼女の肩に手をやって心配の言葉を掛ける
…リザードンの体重は90kg近くあるんだ…
俺ならまだしも、華奢な彼女にとってさっきのリザードンの行為は危ないに決まっていた
「だ、大丈夫…
私よりダンデくんは…?
…下敷きになってたじゃない…」
「俺は、普段からリザードンと戯れているから問題ない!
本当にすまない…後でリザードンにはよく言い聞かせるから…」
言い聞かせるとは言ったが、横で自分の失態に反省の表情を浮かべている俺のリザードン…
…本人も分かっているらしい
「私は本当に大丈夫よ
…甘えたかっただけよね?リザードン」
そう言って穏やかな表情を浮かべながら、俺のリザードンを撫でるハナ…
…ポケモンを慈しむ姿が俺にはキラキラと輝いて見えて、まるで心が浄化されるような気分になる…
そこからハナが自分のポケモンたちのメンテナンスをする姿を眺めながら他愛のない会話をして…
…夜が深くなった頃、俺は離れ難い気持ちを押し込めながら家に帰った…