ポケモン(長編)ダンデ

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ん…暖かい…
…それに…花のような甘い香りがする…
サラサラとした感触も…
…頬に触れると気持ちいいな…

スリスリと心地の良い抱き枕に、俺の体は自然と引き寄せられてしまう
ふわふわと柔らかくって俺はこのまま、2度寝をしてしまい衝動に駆られていた…

「ん…くすぐったいよ…」


んっ…?!
…抱き枕が喋った…!?…いや違う…っ!

とゆーか俺の家に抱き枕なんて無いだろうっ!


寝惚けていた俺の脳内が一気に覚醒する
そして俺はガッ!と目をこじ開けた…!


「…っ!!?」


自分が抱き締めていた物体の正体が視界に映れば、言葉にならない声が喉の奥から飛び出そうとしてくる…!

ど、どうして俺のベッドにハナが…!?
ちょっと待ってくれ…俺は抱き枕だと思って、ハナに擦り寄っていたのか?!

顔を真っ赤にしながら、俺は状況を整理しようと必死だった
…が、記憶が曖昧で正解に辿り着けない…!

パニック状態の俺はハナからすぐに手を離し、逃げるように後ろへと下がる…

…そして慌て過ぎた結果、ベッドから落ちた


「痛っ!?」


ゴンッ!と見事に頭から床にダイブした俺は、ズキズキと痛む頭を押さえる…


「んー…何の音ぉ…?」


強打音が目覚まし時計になってしまった…!
目が覚めたハナは目を擦りながら起き上がり、俺を見下ろしている…!


「…お、おはよう…」


目がバチっと合った俺とハナ
俺は今も軽くパニック状態で、咄嗟に出てきた言葉は朝の挨拶だった…

し、しまった…!
呑気に挨拶してる場合じゃないんだぜ!
何故かは分からないが、また同じベッドで寝てしまっていたんだ…謝らなくては!!


「ダ…ダンデくん…お、おはよう…
…昨日は相当、酔ってたわね…」


俺の顔を見た途端にビクッと肩を揺らしたハナが落ち着かない様子で返事をくれる…
…そしてハナの声に俺の顔は真っ青になった

また酒っ!?
まさか…俺は2度も同じ過ちを犯したのか?!

…決めた…金輪際、絶対に酒は呑まない!
…これ以上、醜態を晒したらハナに嫌われてしまう…!


「ほ、本当にすまない…!
また君に酷いことを…!」


…ようやく自分の恋心を認識出来たというのに最悪だ…!
オマケに今回は昨夜の記憶が無い…!!

あぁ…俺は彼女になんて事をしてしまったんだろうか…絶対に嫌われたんだぜ…

…どんよりと落ち込む俺に気付いたハナは目を合わさずに口を開く…


「私、酷い事なんてされてないわ
…だから安心して?」


彼女はそう言って床に転がって寝ているキバナの元へと向かって行く…

酷い事などされてないとハナは言ってたが…
…本当に俺は何もしてないのか…?

ハナの様子がおかしい…
…何処と無く、元気がないような…
それに嘘を付いてる気がする…

…何故なら俺の腕にはくっきりとした歯型がついていたからだ…
…俺のポケモンたちの歯型ではない…

歯型の大きさから小さな口であるのは確かで…ハナが噛んだとしか考えられない…
…だから俺が彼女に何かしてしまったのは明らかだったんだ…


「キバナ、起きなさい!帰るわよ!!」


大きめの声を出して、ペシペシとキバナの頬を少々乱暴に叩くハナ
…不機嫌気味に目を覚ましたキバナをハナは強引に引っ張っていて、急いで俺の家から出ようとしている…


「昨日はありがとう、お邪魔しました!」


「お前、なんで急いでんだ…?
あ!おい!!?」


起きたばかりのキバナを玄関まで押しながら、ぎこちない笑顔を向けて去って行ったハナ…

…キバナもハナの様子に気付いて眠そうな目を擦りながら声を上げていたが…

彼女に急かされて結局、俺達は別れの挨拶すら出来なかった…


「…俺は何てことを…!」


ハナとキバナが出て行った後、俺は自分の顔を手で覆って立ち尽くした…!

…俺は自分自身の事を善良な人間であると思っていた…
モラルがあって真面目な部類の人間だと…!

なのに…なんだ、この失態は…!
…自分が恋心を抱いている女性に対してする事じゃない…!

…下手したら2度と会ってくれないのでは…

何も無い殺風景な部屋の中で、心底落ち込んでしまった俺を心配したのか、パシュ…っとモンスターボールが開く音がしてリザードンが飛び出してきた


「ばぎゅぁ…」


…まるで俺を慰めるかのように擦り寄ってくるリザードンは、不安そうな顔を浮かべている…


「…すまない、リザードン…
…情けない所を見せてしまったな…」


小さな苦笑を浮かべ、擦り寄ってくるリザードンを力無く撫でた…

…自分がどれだけ落ち込んでいようと、仕事は待ってくれない…
俺は今…ガラルで人気を有してるバトルタワーのオーナーなのだから…

ふらふらとシャワーを浴びて、俺は憂鬱な気分を振り払うかのようにオーナー服に着替える

いつもよりピシッと着用してそのまま、バトルタワーへと向かった…
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